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破綻したユニゾ元社長に30億円の賠償命令 「あの時こうすれば」から考える“経営者に必要な能力”

東京地方裁判所が、民事再生手続き中のユニゾホールディングス元社長の小崎哲資氏に対し、29億9320万円を支払うよう命じていたことが明らかになった。借入金を活用したLBOスキームで、資産状況やキャッシュフローの変化を十分に予測できず、経営破綻を招いたことが取締役の善管注意義務に違反したと認められた異例の判決だ。

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この判決は、経営者に対する意思決定の難しさを突きつけるものでもある。

ユニゾをめぐっては、2019年に旅行代理店大手のエイチ・アイ・エスが敵対的TOBを仕掛けたことをきっかけに投資ファンドを巻き込んだ争奪戦に発展。ホワイトナイトとしてフォートレスやブラックストーンなどの候補が浮上したが、条件が一致せず、上場企業初となる「従業員による買収(エンプロイー・バイアウト=EBO)」を選んだ。

EBOの資金的な支援を行ったのがローンスターである。

エイチ・アイ・エスのTOB価格は1株3100円だったが、買収合戦の過熱で株価は上昇を続け、最終的にユニゾの従業員などが出資するチトセア投資が2020年3月に1株6000円を提示。総額2050億円のTOBが成立し、ユニゾは上場廃止となった。

EBOが成立した後のユニゾはホテルの営業を継続しつつ不動産の売却を進め、その後はオフィスビル保有を主軸とする事業を継続する計画だった。しかし、TOB成立後にコロナ禍が深刻化。ホテルを中心とした営業キャッシュフローが想定を大きく下回ることとなった。売却も計画通りに進まなかった。

チトセア投資はローンスターから買収費用2000億円あまりを調達していた。ユニゾはチトセア投資に2572億円の貸付を実施。チトセアはローンスターへの返済を済ませた。

「TOBから3年で経営破綻」の理由

買収資金の返済方法において、チトセア投資には2つの選択肢があった。1つは半年以内に返済すること。もう1つはローンスターと協業体制を維持する道だ。チトセアは前者を選択した。

EBOの目的は経営方針や事業内容、雇用、社風を守ることだ。つまり、独立することが重視される。

また、ユニゾはブラックストーンをホワイトナイトに迎え入れるか検討している際、ブラックストーンから従業員に対し、労働条件の維持または改善、企業価値向上の利益を享受できるインセンティブの設計、ユニゾ株式取得の機会を与えることなどの条件を提示していた。

それでもEBOという独立の道を選んだのは、ユニゾという会社そのものを残そうとする強い意志の表れだったと言える。そうした背景があったこともあり、ローンスターと協業する道は取りづらい。

結果として、ユニゾは手持ちの不動産を多数売却することになった。ユニゾは最盛期に簿価6000億円を超える不動産を保有していた。しかし、ローンスターへの返済期限が迫っていたなかでコロナ禍が加わり、資産を売り急がなければならない結果となった。ユニゾは2023年4月に民事再生法の適用を申請、経営破綻した。

会社法において取締役が善管注意義務を負う相手は会社であり、企業価値を維持・向上させる観点から意思決定することが求められる。

その観点からすると、小崎氏が主体となって巨額の資金負担を伴うスキームを組み、買収成立後の合理的な資金返済計画や事業計画が十分に検討されていなかったのであれば、善管注意義務違反という地裁の判決は理解できる部分も大きい。

もし、ブラックストーンに買収されていれば、中長期的な観点で投資リターンや資産価値向上を基準に資産の売却時期を判断していた可能性が高い。ブラックストーンには十分な資金力があるからだ。適正な価格で不動産を売却していれば、ユニゾは名前が変わっていたとしても破綻は免れたのではないか。

一方、小崎氏が会社の独立性や従業員を守ろうと奮闘していたのであれば、見え方は違ってくる。大胆な決断ほど綿密な計画が必要だが、コロナ禍の真っただ中でホテルの客室稼働率や不動産市況を見極めることは困難だったはずだ。

だからこそ問われるのは、未来を正確に予測する力ではない。予測できない事態が起こることも想定し、会社の耐久力を検証したうえで意思決定できるかどうかだ。

東京地裁の判決は、経営者にとって“最良”な経営判断がいかに難しいものであるかを突きつけるものである。

文/不破聡 内外タイムス

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