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教員の「威圧的指導」後に自殺未遂、元生徒が鹿児島県を提訴 それでも教師を目指す

「私は高校に入学し、ボート部に所属して、インターハイ出場を目指し、毎日の練習に励んでいました。しかし、その当たり前の日常は、ある日の出来事を境に大きく変わってしまいました。テストで欠点を取り、指導の対象になったことは、自分自身の勉強不足であったと反省していました。しかし、その日の指導は、私が想像していたものとは全く違うものでした」

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 鹿児島県立高校に通っていた元男子生徒(当時15歳)は、中間テストで成績が悪かった。そのため「欠点指導」の対象になった。この日の指導対象の生徒は20人。進路指導室前の廊下に整列させられ、その中から一人を呼び出し、進路指導室の扉を閉め、1対1の指導を行った。同生徒の番になり、A教諭が「おい、ボート部、ボート部は勉強をしないのか?」などと発言。生徒の提出書類をたたきつけた。そして、「勉強していないから欠点を取るのだろう、ね、ね」と鹿児島弁のイントネーションで揶揄(やゆ)した。

同生徒は、A教諭による不適切な指導を受けた後に自殺を図り、深刻な後遺症を負った。そのため、県を相手取り約4588万円の損害賠償を求める訴訟を、鹿児島地裁に起こした。密室で行われたA教諭による「欠点指導」は、社会通念を著しく逸脱した違法行為だと訴えている。

密室での怒号と威圧

訴状などによると、事件が起きたのは2020年10月28日。当時、高校1年生だった元生徒は、中間考査の結果が悪かったことを理由に、A教諭(現在は別の高校に在籍)から指導を受けた。同校では、平均点以下の生徒に対し「欠点指導」が行われていた。

「欠点指導について入学時は知りませんでした」

その際、複数の教師から印鑑をもらう「印鑑集め」と呼ばれる指導も行われ、担任、部活動顧問、教科担任、学年主任、保護者から印鑑を集めなければならなかった。A教諭はその一人で、当時、元生徒にとって最後に印鑑をもらう相手だった。

「A先生とはそれまで特に関わりはなかったです。生徒指導室は、私の教室がある校舎の隣の校舎ですが、私に対する指導前日、怒鳴り声が聞こえました。罵声を浴びせる感じです。『同じ指導を受けるのか…』と思っていました。指導当日、私より順番が前の生徒の指導は、1人あたりの時間は長くは感じませんでした。怒鳴り声はなく、静かでした。自分の順番が来て、『自分も怒鳴られないといいな』と不安な気持ちでした」

指導の場所は、「進路指導室」で、窓がすりガラスで外から中の様子がうかがえない。扉を閉め、1対1で行われるという事実上、密室だ。元生徒は、長机を挟んでA教諭の前に立った。

A教諭は「おい、ボート部。ボート部は勉強しないのか」と発言し、元生徒が提出した書類を机にたたきつけた。元生徒が「勉強しました」と答えると、A教諭は「何が勉強しているのだ、馬鹿野郎が」と怒鳴った。「勉強していないから欠点を取るのだろう、ね、ね」、「何だ! その目の形は。上から目線だな」などと、元生徒の容姿や態度を揶揄したという。

「『やっていません』と答えた人たちはすぐに指導が終わったようですが、何が正解なのかまったくわかりません。理不尽だなと思いました」

教師と生徒という権力勾配がある中で、A教諭の指導には威圧的な言動があった。元生徒は「すみません」と繰り返し、謝るしかできなかった。

また、A教諭が怒鳴った理由には「印鑑集め」も関係していた。必要な印鑑が足りなかった。実際には、担任と部活動顧問が同じだったためだ。元生徒はその説明をしようとしたものの、A教諭は平手で机を何度も強くたたきながら、「なめているのか、覚えておけよ」と威嚇した。他の生徒には数分で終わった一方、元生徒への指導は約10分間にわたって続いた。

「10分ぐらいでしたが、体感では1時間くらいでした。威圧され、口ごもってしまいました。どうして印鑑くらいで怒るんだろうと思いました」

この日は、やる気が出ず、部活をせずに帰宅した。

指導2日後に自殺未遂

元生徒は、欠点指導の対象になったことに後ろめたさがあった。しかも、威圧的な指導があり、名前ではなく「ボート部」と呼ばれた。部活には思い入れがあり、廊下で整列している中には他の部員もいたため、元生徒は強いショックを受けた。ボート部内の人間関係も心配になった。

「『学校に行ったら終わりだ』、『もう生きていけない』という強い恐怖と絶望に襲われました。帰宅後も、部屋で一人落ち込んでいました。考えているうちに『自分はダメ人間なんだ』と思い込むようになりました。そのため、この日は友だちとLINEもしていません」

翌日になっても気持ちは落ち込んだままだ。

「『もう生きていけない』と追い詰められた。自責の念も強かったです。一緒に買い物に行った母親に気づかれないよう、『買い忘れがある』と嘘をつき、自殺のための道具を購入しました」

欠点指導から2日後の10月30日未明、元生徒は自室で自殺を図った。ペットが騒ぎ、家族が異変に気づき、父親に発見されて一命を取り留めた。これにより、元生徒は入院した。心因反応、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が出た。その後、不安状態や焦燥感、解離性健忘、フラッシュバック、睡眠障害に悩まされている。

それでも教員を目指す理由は何か

 訴えた元生徒は教員志望だ。そのため、複数の教員採用試験を受けている。にもかかわらず、県を提訴したのはなぜか。

「事故後に作成された『報告書』で、学校は指導を『不適切』と認めました。A教諭については、以前から厳しい指導をめぐって保護者から苦情が寄せられていたことも指摘されていました。そのため懲戒処分も受けています。しかし、私が『反抗的な態度をした』と書かれています。絶対に反抗した覚えはないです。むしろ怯えていました。その記述には納得がいきません」

実は、報告書作成にあたり、元生徒からの直接の聞き取りはされていない。

「A先生の指導の前は、死について考えたことがあっても他人事でしたし、特に話すこともなかったです。今、教師を目指していますが、自分のように追い詰められた生徒がいた時、教員として話を聞き、手助けをしたい」

文/渋井哲也 内外タイムス

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