会社にとっては悲願だが… 三菱UFJの「時価総額国内1位」に感じる寂しさ
メガバンクの一角を構成する三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)の時価総額が42兆円を超え、東京証券取引所における上場企業の1位、すなわち国内1位の時価総額になった。日本銀行が着手した金融政策の正常化、それに伴う金利の引き上げなど、銀行の収益力が上がる施策を、政府主導で次々打ち出してきたことなどが、今回の時価総額1位に影響を与えたものと思われる。
時価総額ランキングは、20年以上にわたってトヨタ自動車が不動の1位を守り続けてきたが、今年に入ってから時価総額ランキングの上位は大きく変動し続けている。6月には通信大手のソフトバンクグループが時価総額1位の称号を獲得。また、半導体需要と投機的な取引が過熱し、半導体メーカーのキオクシアも1位を獲得。MUFGで4社目となる。
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もちろん、単に外部要因だけで時価総額1位にのしあがったわけではないだろう。個人の顧客に対しては、普通預金から証券までの様々な口座管理の一元サービス「エムット」を提供したり、家計簿アプリの「マネーツリー」を買収したりと、金融にまつわる各種サービスの拡充・強化を実施。全自動で資産運用を行うサービス「ウェルスナビ」をTOBで手に入れるなど、個人向けサービスは都度強化してきた。
また、MUFG傘下の三菱UFJ銀行は、帝国データバンクが公開している「メインバンク動向調査」にて、調査開始以降1位の座をキープし続けている。来年にはオンライン上で決済や融資などが可能になる中小企業向けサービスを展開するなど、法人分野の新規顧客開拓や既存顧客向けサービスの向上にも余念がないように見える。
しかし、日本株という枠組みで見ると、銀行株が1位を獲得するというのは、ちょっとした寂しさを感じてしまう。
「金融企業優位」への違和感
金融企業がランキングの上位を占める構図は、バブル末期の構図と似ている。1989年の時価総額ランキングでは1位がNTTだったが、2位以降は日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行と続く。近年は自動車企業、通信企業、電気機器メーカーなどがバランスよくランクインしていたが、直近のランキングでは再び「金融企業回帰」とも言える現象が起き始めている。
ソフトバンクグループはIT企業という印象が定着しているが、現在会社の収益の大半を占めるのは投資事業である。三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループは言わずもがなメガバンクの2社である。見方次第ではあるものの、上位10社中4社が金融関連企業になっており、キオクシア、アドバンテスト、東京エレクトロン、日立の4社は「ブーム」の半導体銘柄、残りはトヨタとファーストリテイリングである。
ウォークマン、プレイステーションなどといった商品で世界を一変させ、現在時価総額11位のソニーグループは、家庭用ロボット「aibo」の国内販売を終了すると先月発表。商社や半導体銘柄を挟んで19位に位置するNTTは、ドコモの通信環境が悪いとして度々批判の的になっている。ホンダ、パナソニック、TDK、富士フイルムなど、技術力を世界に見せつけたかつての日本企業は「時価総額数十位のどこか」に埋もれた状態だ。
資金が必要な企業に対して資金を貸し出すことは、銀行の主な収益源の一つ。借りたお金を最大限活用し、新商品や新サービスを生み出し、企業の価値向上につながるというのが、健全な循環のようにも思えるが、現在は資金を貸し出す側が輝いている状態だ。もちろん、それが不健全な状態という訳ではないのだが、技術力などで輝いていた日本を知っている側からすると、一抹の寂しさを感じてしまうかもしれない。
文/池田聖人 内外タイムス編集部






