パスポート手数料大幅値下げの背景に…日本人の保有率19%、韓国人は50%超
パスポート発行手数料が1日から大幅に値下げされた。10年用は、窓口申請でこれまでの1万6300円から9300円になり、オンラインではさらに400円安くなった。18歳未満の5年用は4400円。
パスポート発行手数料大幅値下げへ 盛り上がらない海外旅行需要への呼び水になるか
一方、日本を出国する人に課される国際観光旅客税(出国税)は、これまでの1000円から3000円に値上げされた。これは2019年に創設された税金で、観光地の整備などに使われている。訪日外国人が増え、さらなる整備費の財源が必要となった。ただ、この出国税は日本人も負担するため、軽減策として行われたのがパスポート手数料の引き下げだった。
政府・外務省によれば、日本人の海外渡航促進の狙いもある。いわゆる“国際人”を育てようということだ。しかし、日本人のパスポート保有率、2005年は約28%だったが、昨年は約18%まで下がった。欧米や韓国はどこも50%を超えているので、日本人の保有率が著しく低いのがわかる。
日本観光振興協会の調査によれば、海外旅行を「したい」と答えたのは21.5%、「したいけどできない」は27.8%、「したくない」が50.7%もいた。旅行アナリストの鳥海高太朗氏はこの調査結果について、テレビ朝日系「ワイド!スクランブル」で、「若者は旅行好きとネット情報に満足して旅行に興味がない人の2極化が進んでいる」と分析した。
このトレンドを見ると、パスポート手数料値下げは、取得しようという人が増えるきっかけにはなるかもしれないが、実際に海外旅行に行くかどうかは別問題かもしれない。
弁護士の阪口采香氏は番組の中で「大学のとき国際寮で外国人留学生らと仲良くなり、その様子を見ていた方が『この子たちが社会を担う頃には戦争がなくなるのではないか』と言っていた。国際人を育てるという政府の目的はとても重要」と語った。
直接触れ合うことで偏見が減少する「接触理論」
1987年に政府が打ち出した「テン・ミリオン計画」は、当時年間500万人だった海外旅行者を1000万人に倍増する政策だが、バブル景気の追い風もあってわずか4年で目標を達成した。この頃はインターネットもなく、ブランドバッグを安く買うにも海外に行く必要がある時代だった。
今は、ショッピングはもちろん、ネットで外国人の友人をつくることもできるし、意見交換もできる。だが、ネットで海外の情報を得ることと、実際に現地で“空気感”を知るのは別物だ。直接的にコミュニケーションすることで“生身の人間”を知ることができる。
社会心理学には、異なる文化や集団の人々と直接触れ合うことで偏見が減少するという「接触理論」がある。海外に行かなくなる(あるいは行く余裕がない)ことで、実体験ベースで異文化を理解する機会が失われ、ネット上の断片的な情報やステレオタイプをうのみにしやすくなってしまう。
ここ数年で外国人問題が一気にクローズアップされてきたが、自国第一主義者はアルゴリズムによって自分の好む(あるいは嫌悪する)情報だけが強化されるため、「日本は素晴らしい」「外国は治安が悪く危険だ」という極端な認知に偏りやすい。
前出したパスポート保有率もこの10年で10%近く落ちているのだが、若年層にネトウヨ(ネット右翼)が増えてきたことと無関係ではないのかもしれない。
文/横山渉 内外タイムス






