歴史の跡映す牡丹社事件 映画「海殤」満席上映 宮古・台湾の絆向き合う
NGO宮古島国際交流協会と東京大学持続的平和研究センターは22日、未来創造センターで、ドキュメンタリー映画「海殤~牡丹と琉球の悲しい歌~」の無料試写会を開催した。会場は満席となり、観客らは19世紀に起きた琉球と台湾をめぐる牡丹社事件の歴史と、その後の東アジアの地政学へ及んだ影響に静かに向き合った。上映後には監督のション・フー氏を含むトークセッションも行われた。
作品は、1871年に宮古島を含む琉球からの年貢船が台湾南部に漂着し、パイワン族居住地域で遭難した琉球人69人のうち54人が殺害された「牡丹社事件」を、7年の歳月をかけてアーカイブ資料や再現映像、インタビューで紐解く内容。事件は3年後の日本による台湾出兵、さらに琉球処分へと続き、宮古島を含む琉球の歴史を大きく転換させた出来事として知られる。
上映後にはトークセッションが行われ、監督のション・フー氏やパイワン族関係者、東京大学の阿古智子教授らが登壇。来場者と事件の背景や現代への示唆について語り合い、双方の歴史認識や文化交流のあり方について意見が交わされた。
主催者は「身近な公園の記念碑と台湾で制作された一本の映画を手がかりに、宮古島と台湾を結ぶ150年の歩みを見つめ直す機会にしてほしい」と呼びかけた。
観客からは「歴史の重みを初めて知った」「宮古と台湾の関係を考えるきっかけになった」との声も聞かれた。
同協会の下地晃会長は「宮古で上映できたことに深く感謝する」と述べ、東京大学大学院の阿古智子教授は「事件を知らない方にも、自分たちの歴史への理解を深めてほしい」と話した。


