来場者と同じ目線でみゃーくふつについて知見を深めた =13日、未来創造センター・多目的ホール

危機感と希望の声交錯 宮古方言保存シンポ 座談会で広がる継承の輪

 13日に未来創造センターで行われた2025年度宮古方言保存継承事業「シンポジウム~みゃーくふつをつなぐため~」(市文化協会主催)で行われた座談会では現場で活動する4人の登壇者がそれぞれの立場から実践と課題を紹介し、来場者も交えて意見を交えた。会場は終始和やかな雰囲気に包まれ、消滅危機言語に指定される宮古方言の未来について、多角的な議論が展開された。
 シンポジウムが行われた会場には方言継承に関心のある市民らが訪れ、基調講演や宮古民謡、座談会を通じて参加者と共に方言の魅力と継承の可能性を考えた。
 宮古民謡保存協会で副会長を務める砂川美佐子さんは、研究所での取り組み報告。「歌の意味を説明し、発声や舌の使い方を指導しているが、発音の難しさを改めて痛感している」と語った。また、昨年実施した子どもたちを対象にした史跡巡りで民謡の背景にある歴史を学ぶ機会を提供したことも紹介し、「民謡を通して少しでも方言を伝えたい」と強調した。
 エフエムみやこパーソナリティのパーマー・園江さんは、幼少期に方言を話すことを咎(とが)められた経験から「野蛮な言葉」と誤解していたと振り返った。その後、留学先で方言が一つの言語であることに気付いたことがきっかけで、「みゃーくふつがなくなれば日本がなくなるようなもの」と危機感を抱いたという。現在はラジオ番組で「みゃーくふつ学校」を設け、「一片でも残していけたら」と耳から自然に学べる機会を提供するなど普及の意義を訴えた。
 長崎県出身で北小学校で教頭を務めている近藤崇士さんは妻が宮古出身。方言が日常にあっても理解できずにいたが、23年度「しまくとうば講師養成講座」(しまくとぅば普及センター主催)を受講し、普及活動に取り組むようになった。「会話をしないと残らない時機」だとし、学校での授業や地域イベントで会話の場を作ることの重要性を指摘した。
 市文化協会副会長で方言部会長の砂川春美さんは「言葉の持つ力は大きく、若い世代にどんな言葉を伝えるかは今を生きる私たちの責任」と強調。歌詞を方言に直して歌う活動を紹介し「共通語では心に響かない表現も、方言にすると涙があふれるほど感情が伝わる」と、その力を語った。
 来場者との意見交換では「どのレベルなら方言は残せるか」との問いに対し、学校教育での取り組みや、民謡や童謡を通じた親しみやすい方法が提案された。また、方言札の時代についての質問も出されるなど歴史的背景を振り返る場面もあった。
 最後に市史編纂委員会の下地和宏委員長が「地域の言葉には自然や歴史、文化が凝縮されている。自信を持って取り組み、どう保存継承するかを共に考えていきたい」と呼び掛け、座談会は締めくくられた。

関連記事一覧