
博愛の精神を未来へ NGO国際交流協会 記念事業を市に協力要請
宮古島市国際交流協会(NGO)の下地晃会長らは19日、市役所に嘉数登市長を訪ね、来年3月に150周年を迎える平良西里のドイツ皇帝博愛記念碑建立(こんりゅう)に合わせた式典とパネル展の開催について協力を要請した。約150年前のドイツ商船遭難と住民の救助活動は、宮古の歴史を国際交流へとつなげた出来事として知られ、同協会は節目に改めてその意義を市民と共有し後世へ引き継ぐことの大切さを強調した。
同記念碑は、ドイツ皇帝ウイルヘルムⅠ世の命によって、当時漲水港の近くの市街地に1876(明治9)年3月20日に建立されている。
1873年に独商船ロベルトソン号が台風に遭い、上野宮国沖で座礁した際、その近くで漁業を行っていた伊良部島民らと共に村民で船員を救助し、34日間にもわたり、看護、もてなした上で帰国させ、そのことが独地元新聞に取り上げられたことで同皇帝の耳に入り、感銘を受けた皇帝は軍艦を宮古島に派遣し、当時伊良部島民からも見える丘の斜面に建立したという経緯がある。
上野村役場では「劇画 かがり火 ロベルトソン号救助物語」(作画・新里堅進)を1996年に刊行。上野小学校では、5年生が同作品を基にした劇を披露し先祖の美しい心と勇気ある行動を「博愛精神」として後世へとつなげている。
下地会長は「約150年前のドイツ商船遭難とその後の救助活動は、宮古の歴史をドイツとの交流へとつなげた大切な出来事」と述べた上で「60周年以来の記念事業を150周年で行うことは大きな意味を持つ。後世に引き継ぐため、市と職員の力で取り組んでほしい」と話した。
同協会の垣花健志副会長は「当時の独皇帝から贈られた記念碑のレプリカを博物館に展示しても良いのではないかと考えてきたが、行政が担うべきものではないかと思った」と述べ、「できればパネル展も開催し、その後に式典を行いたい。資料も多く出てくるが、いち団体で行うものではない」と語った。
嘉数市長は「教育委員会の年度計画にも、予算にも入っていないが、意義は理解している。本日答えられるものではないが、教育委員会と調整して検討したい」と述べた。
下地会長は「上野村で刊行された『かがり火』をドイツ語に翻訳し、式典で寄贈したい。市の力を借りつつ協力して進めたい」と述べた。