14年ぶりに開催し、入所者福祉や将来構想を協議した =ホテルアトールエメラルド宮古島・漲水の間

全国市町村首長が集結 ハンセン病総会 福祉・人権問題を協議 14年ぶり宮古開催

 全国のハンセン病療養所が所在する自治体の首長らが一堂に会する「全国ハンセン病療養所所在市町連絡協議会」の2025年度総会が10日、平良下里のホテルで開催された。宮古島での開催は14年ぶりとなり、療養所入所者の福祉充実や人権啓発、施設の将来構想などの共通課題について協議した。総会では、24年度の事業および決算報告と25年度事業計画を審議し、承認。役員改選では東京都東村山市長の渡部尚会長を再任した。
 総会には関係自治体の首長や担当者、宮古島市の行政関係者らが出席し、来賓として赤嶺政賢衆議院議員、徳田靖之弁護士らも参加した。
 渡部会長は「宮古島での開催にあたり多くの協力をいただき、この総会を盛大に開けたことに感謝している。この総会での決議と審議を基に、今後の要請活動を展開していきたい」と語り、熊谷康信副会長(登米市長)は「入所者が安心して生活できる環境づくりと人生啓発に取り組み、実りある会議となることを願う」と述べた。
 嘉数登市長は「宮古で14年ぶりに開催できたことを光栄に思う。一堂に会して共通の課題と向き合い、連携を図る深い会合になると確信している」と歓迎の意を表した。
 事業計画案には、「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」式典参加(6月)、きょう11日の宮古南静園視察、国会議員らへの要請活動などが盛り込まれ、決議案では、入所者の平均年齢が88・8歳と高齢化が進む中、医療・介護・看護体制の整備、歴史的建造物の保存と活用、学校教育を通じたハンセン病に関する正しい理解の促進などを今後の課題として挙げ、要請活動に役立てていくことを確認した。
 総会後のインタビューで、渡部会長は「国の取り組みだけでなく、自治体による正しい理解の啓発も重要。若い世代に先入観を持たせない教育を進めることが大切だ」と述べ、文部科学省や法務省への協力要請も視野に入れていく考えを示した。
 嘉数市長は「市として入所者やご家族の声に寄り添い、支援を進めていく」と表明し「市民や教育現場での啓発も大切だが、昨年の総会で聞いた元患者の『今度生まれるときは人間ではなく犬として生まれたい。犬なら差別も隔離もされないから』という言葉の意味を深く考え、苦しまれた方々の思いを次の世代に伝えることが何よりも重要だ」と強調した。

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