舞台で甦る沖縄愛した人生 金井喜久子プロジェクト 挑戦、功績を朗読と音楽で 市出身音楽家の物語
宮古島出身の音楽家、金井(旧姓・川平)喜久子氏(1906年~86年)の半生を振り返る「金井喜久子物語朗読と音楽の調べin宮古島」(金井喜久子プロジェクト実行委員会主催)が20日、開かれた。会場となったマティダ市民劇場には多くの市民らが訪れ、元琉球朝日放送アナウンサーで同実行委の宮城さつきさんが演じる語りと金井氏が生きた時代の音楽に耳を傾け、生涯を音楽と沖縄にささげた御大の世界を共有した。
金井氏は沖縄への差別や偏見が色濃くあった戦前、それも女性として幾多の困難にも負けず音楽の世界で生き、琉球音階を取り入れた交響曲を作曲するなど沖縄と沖縄民謡の素晴らしさを世界中に知らしめようと説き続けた。
同実行委では金井氏の功績をたたえ、生誕120年にあたる2026年を見据え、音楽と舞台朗読をはじめとする文化イベントを通し、彼女の世界を広く発信していくことを目指し活動している。この事業は県文化振興会本年度文化活動支援助成を活用し実施された。
はじめに共催する市教育委員会の大城裕子教育長が同実行委の取り組みを紹介し、「心の羅針盤はいつもふるさと沖縄、そして宮古島に向いていたであろう金井氏の世界をきょうはともに楽しみましょう」とあいさつした。
舞台では一部と二部に分けられ、第一部のプロローグでは市出身の與那城美和さんの歌三線が観客を戦前の沖縄の世界へと引き寄せ、金井氏が生誕からどのようにして音楽人生を歩んでいくのかを宮城さんが朗読した。
金井氏の音源を世に再現した県出身の高良仁美さんと市出身の棚原俊平さんがピアノ伴奏を務め、宮城さん演じる金井氏の心情を旋律で表現した。
第二部では沖縄の本土復帰に向け、時の首相佐藤栄作氏に訪問したエピソードとともに金井氏の「琉球(沖縄)ラプソディー」「沖縄行進曲」と沖縄返還(72年5月15日)の際に祝典序曲で演奏された「飛翔~はばたき~」などをVTRで映し出し、みやこ少年少女合唱団、宮古島吹奏楽団らがそれらを舞台上で再現した。
またテレビ番組「徹子の部屋」出演時(82年5月13日放送)など貴重な映像も放映し、沖縄のために尽力し続けた金井氏の人生が紹介された。
フィナーレでは舞台上に金井家の幸子さんが紹介され、鎌田佐多子同実行委員長から花束が贈呈された。また、金井宅で内弟子としてともに歩んだ宮古島混声合唱団長の新城悦子さん、同団員で娘の金城さやかさん、孫で宮古高校吹奏楽部の金城萌さんが親子3世代で出演したことも紹介。新城さんは、「金井先生、きょうの演奏聞いてますか?」と天に向かって問いかけた。