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顔に泥をぬり厄払いするパーントゥ =平良島尻地区

来訪神「パーントゥ」大暴れ 泥まみれの伝統祭祀 9日も練り歩く 子どもたち阿鼻叫喚

 国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統祭祀「島尻のパーントゥ」が8日、市内平良の島尻集落で始まった。全身泥まみれの奇神パーントゥ3柱が集落内を駆け回り、住民や建物などに泥をつけて厄を払い、向こう1年の無病息災を祈願し、夕刻から日が沈むまで、集落内にはパーントゥから逃げ回る子どもたちの「悲鳴」が響いた。きょう9日も行われる。 
 午後5時過ぎに集落の離れにあるンマリガー(生まれ井)から姿を現した3柱のパーントゥが「キャーン」と呼ばれる「つる草」を身に付け、仮面と杖を手にして登場。待ちに待ったと言わんばかりに観光客らはカメラやスマートフォンを構え、集まった地域住民、観光客らが顔と体に容赦なく泥を塗られ、子どもの阿鼻(あび)叫喚が集落内に響き渡り、興奮した様子で逃げ回った。
 日が落ちるにつれ多くの市民や観光客らが増えはじめ、多くの人の恐怖心と好奇心が集落内に交錯していた。
 女性や子どもたちの「くさい」といった悲鳴や泣き声に「去年よりくさくない」という声も聞こえた。
 家族で訪れた人の中には怖がって泣きわめく小さなわが子を強引にパーントゥの前に差し出し、厄払いをする姿が多く見られた。
 また、パーントゥは集落内でこの1年に新築・改築された家や子どもが生まれた家庭に上がり込むが、建設中の建物ではオトーリをまわす始末。部屋の中に泥を塗り、無病息災と家内安泰を祈願した。
 市内在住で去年長女と初めて訪れたという家族連れは「体の弱い長女が去年の泥でことし一年は健康に過ごせた。春に生まれたばかりの長男も健康になってほしくて再度来た」と父母も泥まみれで笑顔をみせた。
 「島尻のパーントゥ」は「上野野原のサティパロウ」と並ぶ、宮古島の伝統祭祀の一つ。数百年前、島尻の海岸に流れ着いた仮面を男衆がかぶり、集落内を走り回ったことが始まりとされているとのこと。当時の集落住人らは、その仮面が海のかなたから訪れた来訪神としてたてまつったという。
 現在でも来訪神の仮面を着けた神が集落内の悪霊や悪疫といった厄を払いながら3カ所のムトゥ(集落の氏神を祀る聖域)であいさつし、酒を酌み交わし練り歩く。

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