会場の外には(左から)苧麻の繊維から上布になるまでの過程が展示されていた =市未来創造センター内多目的ホール前

苧麻文化の記録、継承へ 国立歴博 映像通し市民ら理解深める

 宮古諸島の苧麻文化を記録したドキュメンタリー映画「ブーンミの島」の上映会1日目が15日、市未来創造センターで行われ約70人が鑑賞した。午前と午後の2部で上映され、午後5時からは製作に携わった国立歴史民俗博物館(歴博)から春日聡監督、内田順子教授とともに仲間伸恵琉球大学准教授の3人が鼎(てい)談を繰り広げ、参加者らは上映会を通し、苧麻文化の継承について深く学んだ。きょう16日にも同時間同内容が行われる。
 このイベントは歴博が主催し、市教育委員会と共催で実施。歴博は1988年より「民俗研究映像」の製作を開始し、研究者が監督を務める形で、フィールドワークに基づく研究成果を映像にまとめている。
 同映画は宮古諸島の苧麻糸手積み文化を記録した作品。多摩美術大学・非常勤講師および歴博客員准教授の春日監督らによって製作された。
 作品中では苧麻糸づくりの生産工程や、それに携わる人々の思いや生きざまが紹介され、▽苧麻糸生産の現状▽伝承方法▽自然との関わり▽祭祀や行事に携わる人々の精神世界―など多様な観点から苧麻手積み糸の世界が描かれている。
 作品が上映されると観客らは映画に真剣に見入っている様子が伺えた。
 内田教授は「苧麻文化の映像記録化」プロジェクトの一環として製作された本作を通じて、宮古島の自然や歴史、そして苧麻を巡る人々の営みについて深く知ってもらう機会となることを期待していることなどを語った。
 春日監督はこのプロジェクトについて福島県大沼郡昭和村での「からむし」の栽培と織りに関する記録映画「からむしのこえ」の製作経験を基に取り組んだという。
 宮古諸島と昭和村の共通点である苧麻糸の手積み文化に着目し、年間を通じて温暖な宮古諸島と日本有数の豪雪地帯である昭和村に苧麻が根付き、現在も生産され続けている点を挙げ、「対極と言える気候の両地域の背景にある自然環境、民俗、歴史は全く異なる」と語り、「その対比が非常に興味深い。とりわけ強風に弱いとされる苧麻が台風の常襲地域である宮古諸島で力強く生育する。実際には防風林や塀のそばが適し、防風ネットで保護することもある」と話した。
 その上で「その記録映画を残すことで歴博研究映像の新たな一編として位置づける意義があると」春日監督は語り、「両作品はいわば姉妹作である」と強調した。
 この上映会および鼎談はきょう16日にも午前10時半からと午後2時半から開演する(30分前開場)。場所も同様に未来創造センター多目的ホールで入場無料、申し込みも不要となっている。

関連記事一覧