【6集】持続可能な宮古島市へ せんねんプラットフォーム

だれひとり取り残されない社会の実現へ

 「持続可能な宮古島市」の実現に向け、市民とともに考え、アクションを起こす市民の入り口となる「せんねんプラットフォーム」を担当する市エコアイランド推進課と官民という枠に囚われず、共創によるプラットフォーム構築を目指す民間業者等を交えて対談を行った。

市民の声からうまれた「宮古島市版マンダラ」
 市エコアイランド推進課は2008年のエコアイランド宮古島宣言以降、温暖化対策の観点からCO2排出削減や再生可能エネルギー事業に取り組んできたが、市民からよく分からないと言う声があった。そのため、持続可能な島づくりに全島民が関わる方法を模索。地域資源を循環し、その土地で住み続けられる取り組みを行う環境省の地域循環共生圏構築事業(ローカルSDGs)を活用し、地域課題の洗い出しとして、市民の声を聞くワークショップを実施。不安や不満、ありたい未来、そのためのアイディアを体系的に落とし込んだ「宮古島市版マンダラ」を作成、その課程を通じ誕生したのが「市民が主体的に島づくりに関わる」場がせんねんプラットフォームとなる。

▼ せんねんプラットフォームのきっかけについて
北林さん:私たちは、エコアイランドを実現していくためには、このマンダラに書かれていることに「必要な事業を組もうね」とか「それぞれが各自のフィールドで頑張ろうね」ではなく、この実現したい未来を描き続け、そこに必要な取り組みを生み続けることが重要なんじゃないかと考えました。それには、市民が積極的に話し合え、取り組みをスタートさせることもできるし、深めることもできる、常にみんなで生み出していく、共創していくという場所が必要なんだなと思い、そういう場をプラットフォームと呼び、具体的な在り方について議論を重ねてきました。行政だけがその場作りをするではなくて、 恒常的に市民が関わっていける、宮古に住む、そして宮古と繋がりのある誰もが主体的に参加できる場づくりをすることを目指して、シグマさんやMURCさんとともに参画させてもらったのが始まりですね。

せんねんプラットフォームで伝えたいこと
佐和田代表:私は「あの時もうちょっとあぁしておけば」「もうちょっと考えておけば良かった」と言わない未来にしたいと思って活動しています。宮古に生まれ育ち、生活する中で色々な関係性を大切に育んできました。その中で「まぁ、あの人が絡んでいるんだから荒波立てない方が良いよね」と片目を瞑ってやり過ごしていることがあって。でもそれでは私の娘、そして彼女が紡いでいく世代に対して無責任な行動を取っていることになると気づいたんです。少しでもおかしいなと感じたならば、言葉を飲み込まずに言葉にする。そのモヤモヤを真正面から向き合って話し合える仲間がいれば、きっと時間はかかっても解消できる仕組みづくりをする事ができると思うんです。
 これまで行政に対して「どうにかしてよ」と他人事みたいに思っていたけど、今は考え方が変わって、、「できないなら、みんなで補えば良い」と考えています。誰かに責任を取ってもらうのではなく、自分たちで責任を持てる島になったらこれ以上幸せことはありません。その先に、娘が大人になっても生きやすい島があると信じているので、その未来に向けて言葉にすることを続けていきたいです。

友利さん:この人だからやれているとかあの人だからとかで分けられるのではなく、誰でもが入って来れてみんなが宮古のために頑張ることができるプラットフォームになればと思っている。
 プラットフォームを通して、自分の言ったことが恥ずかしいとか間違ってるとかじゃなく、宮古のためを思う気持ちとか熱量とかそういうことがちゃんと出せるようになれば、あきらめる島じゃなく、この島にいながら挑戦し続けることができる未来があると思う。
 一つの目標に向かって取り組む実行者が別の場面では協力者となるような形ができて、みんながそれぞれの役割・立場でいて、千年先の宮古(みゃーく)へ、一歩ずつしか進めないから、一歩ずつ前に進み、挑戦したくなった時にできる、挑戦し続けることができる島になると思う。

下地課長:市はエコアイランドの具現化に取り組んでいますが、インバウンドやコロナ、世界情勢の不安に、燃料高騰からくる家計への負担など、矢継ぎ早にさまざまな状況や判断を求められる今、多くの方達は島の未来を考えることについて先送りしてしまう状況と思われます。でもそんな時だからこそ、一人ひとりが宮古の未来を見据え、思い描いている島の姿を共有し、一つ一つ形にすることで、いつまでも住み続けられる豊かな島がつくり上げられるのではないかと思うんです。せんねんプラットフォームはそんな活動を実践する場です。まだ始まったばかりの取り組みですが、皆さんの島を思う気持ちを糧に成長して行きたいです。

▼ せんねんプラットフォームが目指す未来について
愛澤係長:すでにプラットフォームを構築している島根県の海士町も滋賀県の東近江市も「課題となること全部解決しますよ」というプラットフォームだった。私たちの目指しているのは一言で言えば「エコアイランドの実現」だと思っている。そのために必要な要素をプラットフォームで市民と一緒にどんどん出していって、それに向かって動いていくことが大事。「ゴール=課題がない」ということは絶対にあり得ないと思う。変化していく時代の中で、何かが解決されても別の問題がまた出てくる。それはきっと今は想像できていないことかもしれない。大切なのは1つ1つのゴール、課題の解決を目指して動き続けていくことだと思う。

髙原さん:もし何か問題が起こっても宮古に暮らす人たちが「ちゃんと気づき、ちゃんと声にし、ちゃんと動ける」という状況を作りたい。宮古に住んでいる人たち全てが、それぞれの言葉で「宮古に住んで良かった。宮古に住めて本当に幸せです」って胸を張って言える地域にしたい。
 同時に「自分のまち」であることや「自分の行いがまちに影響を与える」ということを実感して、全員が社会とのつながりを意識することができるようになればいいなと思っている。
 あと、挑戦しないことも受け入れてもらえたら、プレッシャーにならなくて良いですよね。挑戦する人だけでなく、応援する人、参加する人、見守る人、叱る人などいろんな立場で関われる形にできると良い。

北林さん:宮古にいる(そして未来の宮古の)生きとし生けるものがすべて、だれひとり取り残されない社会。ですかね、目指しているのは。私たちが目指すエコアイランドは、宮古にあるエコシステム(生態系)が循環し、互いに補完し合っている状態を指していると思います。私たちは皆それぞれが違いを持ち、異なる住みづらさや生きづらさを抱えながら暮らしていると思うのですが、それを個の問題として片付けず、社会の問題として受け止め、一人一人に寄り添う事ができる社会がエコアイランドなんじゃないかなと思うんです。そしてやっぱり、宮古は人だけでは成っていないので、海や木々、草花、鳥や魚、虫たち、共に在る全ての存在に目を向け、エコシステムの一部として尊重し、関わっていることが当たり前な社会であることも、エコアイランドとして外せない要素だと思います。

<宮古島市×MURC>持続可能な島に向け覚書締結

 宮古島市(座喜味一幸市長)と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC、池田雅一社長)は2022年10月25日に、安定的かつ継続的な協力関係を構築するための覚書を締結、企業版ふるさと納税(人材派遣型)制度を活用し、せんねんプラットフォームの実装や体制構築に向け取り組む。MURCは市への企業版ふるさと納税第1号で、2022年度の寄付金額は1000万円。

 覚書の締結後、MURCは同社の髙原悠さんを市に派遣。髙原さんは現在、せんねんプラットフォーム事業推進マネージャーとして、同プラットフォームの実装に向けた趣意書や市民の考えた取組を支援する助成基準の作成、ローカルシンクタンク機能の検討、庁内協議への参画などを担当している。
 髙原さんは企業版ふるさと納税の活用において「約2年前から東京で同事業に関わってきたが遠方での支援のもどかしさや心苦しさ、本質的にコミットすることの難しさを感じていた」と振り返り「企業版ふるさと納税の仕組みを使うことで、シンクタンクとして地域のためにできることが増えていると感じる」と話す。派遣により宮古島市で暮らすことで、この地域に住む人たちが本当にして欲しいことや必要なことを知ることができ、柔軟に対応できるメリットがあると述べ、「外からの支援者ではなく、市に席を置き同じ立場になることで、同じ目線に立てるメリットがある。受発注業者のような関係を超えた形を築くことができる」と語った。

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