風になびく大漁旗もまばら=佐良浜漁港

コロナ禍、静かな旧正月

家庭の食卓にはオードブルやおにぎり、お神酒などが豪華に並んだ=伊良部佐良浜の民家

 旧暦1月1日に当たる12日、伊良部の佐良浜集落では多くの家庭で旧正月を祝う光景が見られた。例年はムトゥヤ―(本家)に親戚が集まり盛大に祝うが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う県独自の緊急事態宣言下であることから、佐良浜漁港では大漁旗もまばら、集落内でも大人数での集まりは見られず、家族のみで過ごす静かな旧正月となった。

 例年は漁師たちが航海安全と豊漁を祈願し漁船に色とりどりの大漁旗を掲げる。この日漁港に広がる多くの漁船のなかで掲げられていたのは3隻に1隻程度だった。
 集落内ではサトウキビ農家を営む夫婦が自宅の食卓にオードブルを並べ静かに新年を祝っていた。夫の60代男性によると、例年は母がひとりで住むムトゥヤーに身内が大勢集まり賑やかだが、今年はコロナ禍で島外からの帰省者もなく静かで、男性自身も午前中の短時間、1人で尋ね仏壇に線香を上げただけという。
 食卓はオードブル、刺身、フライドチキンやビール缶などと賑やか、地域の風習の手作りおにぎりも6つ並んでいた。午前中にはお神酒(みき)を手に無病息災、五穀豊穣、家庭円満などを祈りひと口飲んだという。男性は「今年は静かに過ごすが、大切な行事。大晦日から3日間きっちり休む」と笑顔で語った。
 旧正月を祝う風習は日本で現在ほとんど残っていないが、中国をはじめアジアの多くの国々では今も1年で最も重要な行事。宮古地区でも旧暦に密着する漁業地域の佐良浜や池間島などで残っている。

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