教育現場に浸透しない「いじめ法」、施行から13年間、一度も見直されていないのはなぜだ
いじめの認知件数が増加する中で、現行の「いじめ防止対策推進法」(いじめ法)がうまく機能せず、いじめ被害者側と、学校・教育委員会側との間でトラブルが生じることがある。
いじめ法が施行されて13年。一度も見直しがされていない。改正を求める動きはどうなっているのか。
韓国でいじめ処分履歴を大学入試に反映義務化 悪質なら大幅減点、抑止力に期待の声
文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2024年度の、小中高生と特別支援学校でのいじめの認知件数は76万9022件で、過去最も多い数を記録した。こうした増加傾向の中で、心身のけがや自殺、不登校にいたる「重大事態」も1404件と同じく過去最多になった。
いじめの認知件数が多くなるのは、学校が積極的に認知している面があるからだろう。その結果、加害者を指導するきっかけにもなる。
その一方で、重大事態になりながらも、必ずしも認められない。また、重大事態になれば、調査委員会が設置されるが、調査委と被害者側で十分な話し合いがされなかったり、調査に何年もかかることがある。調査結果が出たとしても、加害者側に指導がされないことや学校現場が改善されないこともしばしばある。
2011年の大津市いじめ自殺がきっかけ
学校のいじめ対応の根拠にはいじめ法と、それにもとづくガイドラインがある。ガイドラインは文科省が法律にもとづいて作成したもので、最新のものは2024年8月30日に改訂された。
しかし、学校や教育委員会にいじめ法やガイドラインが浸透していない。または、独自の解釈をすることがある。なかには、「ガイドラインは法的拘束力がない」と主張する学校や教育委員会もある。いじめ法成立後、何度も法改正を求める動きがあるが、なかなか現実味を帯びない。
これまで、改正の動きが現実味を帯びたのは1回だけ。2018年から19年の議論のときだ。いじめ法は議員立法のため、国会議員が動かなければ改正できない。当時、国会議員の有志が勉強会を開いた。座長は馳浩氏(当時、衆議院議員)だった。
その勉強会では、いじめ問題に取り組む団体や個人、有識者がヒアリングを受けた。私も含め、メディアの記者も取材していた。
いじめ法の成立は、2011年に起きた大津市いじめ自殺がきっかけだった。10月11日、男子生徒がマンションから飛び降り、死亡した。「自殺の練習」をさせられていたことは衝撃的で、世論の関心が高まり、第三者委員会が設置されたり、立法の動きにつながったりした。
いじめ自殺が起きた後に就任した越直美・大津市長(当時)は遺族と面会。謝罪した。また、市長直轄の第三者委員会を設置した。いじめ法の基礎となる取り組みをした。当時の取材メモによると、勉強会には、越・大津市長や遺族も参加し、法成立後の課題をあげた上で法改正の必要性を訴えていた。
いじめ法の附則第2条には、施行後3年を目途に見直しをする検討事項が入っていた。しかし、13年9月に施行されてから一度も改正されていない。ただ、18年12月、改正する条文イメージのたたき台ができ、改正議論が進展するかと期待が高まった。
しかし、現場に反対があることを理由に、19年4月、馳座長がたたき台を撤回し、座長試案が提示された。その内容は条文イメージ案よりも後退した。
たとえば、「学校の教職員は、いじめを受けた児童等を徹底して守り通す責務を有し、いやしくもいじめ又はいじめが疑われる事実を知りながらこれを放置し、又はいじめを助長してはならない」という条文や、いじめ対策主任の設置などがなくなった。
そのため、関係者には失望感が漂った。このことがあって、国会議員の動きは鈍くなった。また、いじめ問題に取り組む団体などが法改正を望む動きがあったとしても、個々の動きにとどまり、大きなうねりになることはなかった。そのため、現在のいじめ法では十分に機能しないことがわかりつつ、現行法で対処しなければならない状況が続いている。
現行法はいじめ防止よりも事後対応に重点
そんな中、主にいじめ防止の取り組みをしている一般社団法人「ヒューマン・ラブ・エイド(HLA)」は法改正の機運を高めようと8月24日、衆議院第二議員会館多目的会議室で「君たちは、いじめ防止対策推進法をどう変える?」という集会を開く。
7月21日に文科記者会で開いた記者会見で、仲野繁共同代表は「学校は、法律の内容を知らなかったりする。法律名が『いじめ防止対策推進法』なのに、防止よりも事後対応に重点が置かれすぎている」と、改正の必要性について述べた。
また、「法律を決めるのは政治家なので、子どもや保護者、被害を受ける側のことをベースにした意味のあるものにしようと訴えて持っていくしかない」と訴えた。
いじめを背景に齋藤華子さん(当時13歳)を自殺で亡くした父親の信太郎さん(53)は、いじめ法について、いじめが認定された後の改善について実質的な効果が出ていないなどと指摘し、「遺族の立場から見れば、『絵に描いた餅』です。罰則を含めた法改正が待ったなしだ」と語った。
集会は第一部が若者の部(13時から15時30分)、第二部が大人の部(16時から18時30分)。参加費は無料。問い合わせはHLAへ。
文/渋井哲也 内外タイムス






