中国の中産階級破産7点セット(第1回)不動産不況で住宅ローン返済できず競売物件増加
以前の記事でもお伝えしたとおり、中国の「流行語」を見れば、その時々の大まかなトレンドや方向性がつかめる。
今回は、まさに今の中国で話題となっている「中産階級破産7点セット(中产破产七件套)」を取り上げ、現代中国社会のリアルな姿を解説していく。
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中産階級破産7点セットとは
中国の多くの家庭が恐れている「中産階級破産7点セット」が指すのは、次の7つだ。
・高額な住宅ローン
・配偶者の専業主婦化
・子どもへの教育投資
・無謀な起業
・盲目的な投資
・健康の軽視
・見えっ張りな消費
今回はこの7つの切り口から、現代中国のリアルな姿を解説していく。
「負の資産」になる住宅ローン
「破産7点セット」の筆頭に不動産が挙がる背景には、深刻な不動産不況がある。国家統計局のデータを見ても、2022年に始まった住宅価格の下落は、いまだ底が見えない状況が続いている。

こうした下落局面では、住宅ローンの残高が物件の価値を上回る担保割れが起こりかねない。仮に失職してローンの返済が滞った場合、マイホームを売却しても借金だけが残る「負の資産」と化してしまう。それが、この言葉が意味する深刻な現実だ。
では、不動産価格の底はいつ訪れるのか。バブル崩壊以降、日本では「中国政府はいつ、どのような不動産業界の救済措置を打つのか」が議論の的となっている。しかし、現在の中国社会の動向を鑑みると、筆者は「中国政府が不動産業界を全面的に救済することはない」と考えている。
不動産業界を救済しない中国政府
日本ではバブル崩壊以降に不良債権処理が行われた。この結果、不動産価格は維持され、建設業や銀行、または地方経済が延命した。
一方で、中国の不動産業界を見ると、ここ数年の政策は真逆だ。
不動産バブル崩壊のきっかけとなった大手デベロッパーの「恒大集団」は上場廃止、子会社の清算など破綻処理が最終局面となっている。また同じく大手の「碧桂園」は債務不履行を起こして法的整理の間際であり、ここでも政府から実質的に救済しない措置が取られている。国有企業を後ろ盾に持つ「万科」も社債が返済できず、見通しが不透明な状態に陥っている。
影響は大手デベロッパーだけに留まらない。2025年上半期だけで全国の不動産企業による破産・清算案件は1500件を超え、前年比約25%増加した。これらデベロッパーに対する動きを見る限り、中国政府には不良債権を処理して住宅価格を元に戻そうという姿勢が見えない。
なぜ中国では不動産業界が積極的に救済されないのか、その要因と考えられるのが人口減少だ。中国は2020年代前半を境に人口減少社会へと突入した。

人口が減る国では住宅需要は基本的に縮小する。住宅価格を維持するには巨大な財政支出を行う必要があるが、数年後にはまた下落となる。そしてGDPへの寄与も小さい。その一方で最新技術がニュースをにぎわすように、中国は不動産中心の成長モデルから、先端産業中心の成長モデルへ移行しているというのが筆者の推察だ。
不動産価格の下落を加速させる競売物件
そして、破産7点セットのトップにこの言葉が登場するように、中国では住宅ローンの返済ができなくなり、住宅が競売にかけられる事例が尽きない。
現地メディア「三聯生活週刊」によれば2023年以降、3年連続で中国の競売住宅数は60万戸以上となっている。2025年1月から11月までの全国の競売住宅数は約65万戸に達した。以前の競売物件は経営破綻した企業の不動産が中心だったが、いまや66%以上が個人住宅だ。
そして、競売物件は強制処分かつ急速な現金化が求められるため、市場の適正価格よりも大幅に安く落札される。そして仮に、あるマンション群で1件でも極端な安値で競売落札されると、それがその地域全体の新たな資産価値基準となり、周辺の中古住宅・新築住宅の価格まで連鎖的に引き下げてしまう。
これが今の中国で起こっている、新たな不動産価格の下落メカニズムだ。
不動産不況と競売物件の悪循環は、住宅ローンを抱える中間層を直撃し、生活基盤そのものを揺るがしている。「住宅ローン」という最初の1ピースが崩れた時、かつての中産階級の象徴だったライフスタイルが連鎖的に破綻へと向かっていく。
次回は、この「破産7点セット」の残る要素から現代中国社会が直面する、さらなるリスクを読み解いていく。
文/下川英馬 内外タイムス






