イオンモール熊本の爆発事故は防げなかったのか…福島第1原発事故の教訓から学ぶ危機管理
7月28日、最大震度7の地震が熊本地方を襲った。余震が続く中、イオンモール熊本でガス爆発があり、犠牲者が出ている。
我が国は、1995年の阪神淡路大震災、2004年の新潟中越地震、2011年の東日本大震災などの地震を経験し、その都度、地震に対して備える努力を重ねてきた。
地震後に発生した被害で最大のものは、東日本大震災時の津波による被害と、東京電力福島第1原子力発電所の事故である。
今回のイオンモール熊本の事故は、原子力発電所事故とは規模的に相違があるものの、危機管理上重要で共通する示唆を与えているものと考えられるので、危機管理の視点から検証してみたい。
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過去の地震災害の教訓と対策
多くの教訓を残した阪神淡路大震災後、ハード・ソフト両面で改革がなされた。主なものとして、建物・施設などの耐震設計の反映と実施、特に高速道路の橋脚の耐震性向上は、その後の大きな震災でも効果を発揮した。
自衛隊と地方自治体との関係改善も、ソフト面での大きな改善点となった。
また不十分ではあったが、首相官邸の危機管理体制についても改善がなされた。新潟中越地震では、上越新幹線の脱線事故の反省から、種々の対策がなされ、東日本大震災発生時、周辺の新幹線は事故を起こさずに停車した。
東日本大震災では、地震後の津波による被害が甚大だった。原発事故は、津波による災害と認識されている面があるが、根源的には発電所への送電のための送電塔が地震のために倒壊したことによって外部電源が供給されず、非常用の発電装置が津波によって浸水して不作動となるなど不具合が重なり、原子炉本体への冷却水の供給ができなくなったものだ。津波、原子力発電所という新たな要因が重なり、国家的規模の困難を発生させた。
福島第1原発事故とイオンモール事故の共通点
東日本大震災における原子力発電所の事故と、今回のイオンモール熊本の事故には、危機管理的な観点から共通点がある。
地震の揺れによる直接的破壊によって生起した不具合が全体システムの破壊の出発点となり、徐々に拡大して別のシステム・仕組みにまで波及、重大事故につながっている点だ。
原発事故については多くの経緯が既に知られているため、ここでの詳述は避ける。
今回の爆発事故は、地震に原因があるとすると、施設全体にLPガスを供給するシステムの破損、不作動などによって生じているものと考えられる。LPガスのタンクから、配管によりモールの各機器・施設に供給することになっているが、震度5程度の地震を感知した場合、タンクの出口弁が閉止する機構になっている。
従って、正常に機能すれば、施設の配管内にしかLPガスはなく、配管の破損により流失した場合、爆発につながる危険性はある。しかしながら爆発の規模からして配管内のLPガスの量だけでは、あれだけ大きな爆発にはならないと指摘されている。
考え得る爆発に至るメカニズムは以下のように推定される。
(1)地震の揺れによって施設内のLPガス配管が破損し、LPガスが漏れる
(2)LPガスタンクの地震の揺れで作動する制止弁が何らかの原因で作動しない
(3)破損部から漏れ出たLPガスが施設内に流出、戸外に流出せず施設内に滞留する
(4)何らかの原因で着火し爆発する
これらのどの時点でもストップがかからなかったことが大事故に至った。言い換えれば、どこか一点でもストップできれば事故は防げた可能性が高い。
航空機の安全性設計…確立された科学的技法
危機管理には、危機の認識から始まり、予知・予防、対処、被害極限がある。被害復旧は危機管理とは別の考えだが、復旧を勘案しての極限を図る判断もある。
危機管理に「やりすぎ」ということはない。しかし、危機に備えることを第一とすると、平常時に多くの負担が生じ、特に経済的に成り立たない事態が生じる。
航空機は、空中に飛び上がれば物理的支援は得られないため、単独で作動するシステムが必要だ。したがって、航空機はその設計段階ですべてのことが決定され、構造、部品、システムに作りこまれる。
航空機設計では、安全性が絶対的に重要なファクター。安全設計にはおおむね確立された設計手法がある。FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、フェイルセーフ、フールプルーフなどの考えを駆使して、なおかつ、より高い性能等を実現することになる。
航空機は多くの機械・電気・油圧システムなどから構成され、構造部、部品、サブシステム、システムで構成されている。さらに、最終的には人間がコントロールする、マン・マシン複合システムであるため、人間の過誤も不具合要因にカウントされている。
2つの重大故障が重なる、1つの重大故障と1つの人間の錯誤が重なる。どちらであっても、致命的・破壊的な事態に至らないなどの基準に従って設計されるのだ。
危機管理システムの構築提案
東日本大震災後の原発事故、今回のイオンモール熊本の爆発事故は規模、影響共に違うが、共通点は地震の揺れという直接的被害から一拍おいて発生していることである。その間に被害発生を防止することができないか。
今回の場合、プロパンガスタンク、配管システム、各個の使用機器・施設を総合してモール全体の危機管理設計を考える必要がある。イオンモール熊本のLPガスシステムについての具体的対応策として下記が考えられる。
(1)LPガスタンクの振動制止機構の多重化、並列化
(2)危険ガスが滞留しない建物構造
(3)発災時のモニター機構と人的対応のマニュアル化
社会インフラも含めて、地震、その他の災害に対する危機管理設計を、航空機に適用している安全設計の技法を適用することを提案する。特に原子力発電所については再検証を強く提案する。
文/島本順光 内外タイムス






