【田母神俊雄のニュース・レビュー】軍事力の強化が戦争を抑止する 薄弱だった米国の軍事攻撃の理由
トランプ大統領は戦争をしない大統領かと思っていたが、今年になって1月にベネズエラ攻撃、2月末にはイラン攻撃を行い、イランとの戦争はすでに半年以上も続いている。アメリカはこれまで自らを「世界の警察官」と称し、世界各地の戦争に関わってきた。今回のイラン戦争は第2次大戦終了後、アメリカにとって26回目の戦争だと言われている。
【田母神俊雄のニュース・レビュー】帝国主義、植民地主義の再来か
第1次トランプ大統領の頃から、日本の安倍晋三元総理も含め、軍事力による現状変更を許さないと国際社会で声高に言われるようになり、ロシアのウクライナ侵攻は、軍事力による現状変更であると指摘され、国際的非難が起きた。アメリカはロシア非難の急先鋒であり、ロシアに対する数々の制裁を主導してきたが、今回のベネズエラ攻撃、そしてイラン攻撃は、これまでのアメリカの主張を覆す軍事力による現状変更そのものではないか。
アメリカは、ベネズエラがアメリカに麻薬を輸出する一拠点になっているとして、マドゥロ大統領を拘束しアメリカへ連行した。しかし、アメリカに流入する麻薬の多くはメキシコ経由と言われており、マドゥロ大統領拘束の理由は薄弱である。
またアメリカは、2月28日、イランとの核拡散防止条約関連協議の交渉中に突然イラン攻撃を始めた。表向きはイランのNPT条約違反に対する攻撃としているが、交渉進行中だったこともあり、これも理由が薄弱である。
軍事攻撃はドル決済から人民元決済の移行への懸念から
アメリカのこれら2つの国への軍事攻撃は、石油売買がドル決済から中国の人民元決済に移行し始めたことをつぶすためだったのではないかと思う。世界に対して、ドル決済体制を守るための軍事攻撃とは言えないから、麻薬やNPT違反を理由にしているに過ぎない。
アメリカは世界最大の借金国であるが、世界でドル決済体制が主流であるためアメリカにとって大きな問題は生じていない。ドル決済体制を維持することがアメリカの大きな国益なのだ。
しかし、今年のこれら2つのアメリカの軍事力行使で、これまで言われてきた軍事力による現状変更を許さないという言葉は死語となってしまった。これまで我が国では、これを言わないと中国の台湾侵攻そして沖縄侵攻を抑止することはできないと言ってきたが、大国はこんな言葉に拘束されることはなく、自分の都合で行動する。それが明らかになっただけのことだ。
言葉だけで中国の台湾侵攻や沖縄侵攻を抑止することはできない。侵略を抑止するには、「来るなら来い、我が国は最後の一兵になるまで戦い抜くぞ」という軍事的な構えが必要だ。
中国が侵略を企図した時に、台湾や日本の軍事的な構えを見て、侵略を決行するか否か最終的に決断する。そこで台湾や日本が強いと思えば中国の侵略は抑止される。
戦争はしないことが一番だ。戦争が始まってしまうと大被害を受け、その復旧にはばく大な費用が必要になる。戦争抑止のため軍事力を強化する費用は、戦争被害を復旧する費用に比べればはるかに少ないもので済む。
ウクライナ戦争が始まる前に、ゼレンスキー大統領がロシアとの関係は全て話し合いで解決できると言って、軍事態勢強化をケチったことが現在の大被害を招いている。
第29代航空幕僚長 田母神俊雄






