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変質する中国の面子社会(第2回)メッキが剥がれつつあるスワロフスキーの苦境

この連載では、変化する中国の面子(メンツ)と、それが消費に及ぼす影響を解説している。前回は、他人にアピールするためのピアノ消費が急速に落ち込んでいる状況を紹介した。

今回と次回では、面子消費の変化によって全く異なる運命をたどっている3つの宝飾品業界の事情―スワロフスキー、ダイヤモンド、そして金について解説する。

変質する中国の面子社会(第1回)ステータスの象徴から無償譲渡すら拒否されるようになったピアノバブルの崩壊

売上半減、100店舗が閉店

オーストリア発祥のスワロフスキーは100年以上の歴史を誇り、中国国内では知らない人がいないほどの知名度を誇る。

かつて中国はスワロフスキーにとって最も重要な市場だった。2019年時点で中国本土の店舗数は400店近くに達し、100都市をカバーしていた。2016年のクリスタル事業の世界売上26億ユーロのうち、中国市場が17億元(約2.47億ユーロ)を占め、2017年には米国を抜き世界最大の市場へと躍進していた。

しかしここ数年、スワロフスキーの輝きは急速に失われつつある。2019年から2020年にかけて世界売上高は2年連続で二桁の減少を記録し、特に中国市場での落ち込みが目立った。

2023年時点での中国本土の全体業績は、2019年と比較して50%減少している。スワロフスキーが公表した2024年度の決算データによると、世界全体のジュエリー事業は9%の成長を果たしたものの、中国市場の減速が響き、アジア市場全体での成長率は3%にとどまった。

現地メディア、深圳商報によると、近年は中国国内での閉店の動きが相次いでいる。業界の推計では閉店数は100店舗近くに達しており、かつてショッピングモールの一等地を占めていた店舗の多くが、今では小さな特設カウンターに置き換わるなど、往時のにぎわいとは対照的な光景となっている。

中古市場はさらに残酷だ。元値が1000元(約24000円)以上するネックレスも、中古フリマアプリではわずか150〜300元(約3600〜7200円)でしか売れない。

これは商品のリセールバリューの低さを露呈しているだけでなく、ブランドに対する消費者の信頼が大幅に失墜したことを物語っている。

理性的になった消費者の価値判断

売上低迷の根本にあるのは、消費者がスワロフスキーの本質的な価値を再評価し始めたことだ。かつて中国の消費者は海外ブランドのストーリーやデザインに喜んで大金を費やした。しかし現在、消費観は理性的になり、こういったプレミアム的な価値への需要は急速に縮小している。

特に面子という価値観がすっかり変容した今の若い消費者は、大物ブランドのストーリーに惑わされることなく、素材・耐久性・コスパといった目に見える価値を重視している。ブランドストーリーやマーケティングだけに頼るアクセサリーは、徐々にその輝きを失っていく傾向にある。

ECサイトやSNS上では、スワロフスキーに「変色する」「素材が安っぽい」といった不満が絶えず書き込まれており、「学生時代は買えなかったけれど、大人になって買えるようになったら魅力を感じなくなった。メッキのチェーンに1000元も払うのは馬鹿らしい」と吐露する消費者もいる。

さらに決定的なのは、消費者が「なぜ1000元も出して人造クリスタルを買うのか?本物の金や銀の方がずっと価値があるのではないか?」と費用対効果を計算し始めたことだ。

背景には近年の金消費の過熱がある。「2023年中国ジュエリー業界発展報告」によると、2023年の中国のジュエリー・宝石市場規模は前年比14%増の8200億元(約19兆6800億円)で、そのうち金製品の市場規模は前年比26%増の5180億元(約12兆4320億円)に達した。

中国黄金協会のデータでも、2023年の全国の金消費量は1089.69トン(同8.78%増)、うち金アクセサリーは706.48トン(同7.97%増)と伸びている。

同時に、人工ダイヤモンドの価格がピーク時から50%以上減少し、1カラットの商品が8000元から3500元まで下落したことも、1000元の人造クリスタルのプレミアムを一層失わせる結果となった。

かつてスワロフスキーが与えたのは、安価な海外ブランドという手軽な面子だった。しかし、消費者が真の価値を見極める段階へとシフトした現在、このメッキは剥がれつつある。

では、実質的な価値を象徴するダイヤモンドや金には、どのような変化が生まれているのだろうか。次回は、ダイヤモンドと金の姿から、中国面子社会の変容をさらに深掘りする。

文/下川英馬 内外タイムス

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