「宮古島文学賞」の授賞式で賞状を手にする伊佐山さん(前列右から3人目)、佐藤さん(同4人目)、半崎さん(同5人目)ら =ホテルアトールエメラルド宮古島

伊佐山さんら受賞たたえる 第7回宮古島文学賞 「今後も書き続けたい」

 宮古島市文化協会(饒平名和枝会長)は2日、平良下里のホテルで「第7回宮古島文学賞」の授賞式を行った。「島」をテーマにした短編小説の作品は全国28都道府県から76作品の応募があり、一席は伊佐山昴(のぼる)さん(長崎県)の「水平線」、二席は佐藤陽翔(はると)さん(富山県)の「爆(は)ぜる。」、佳作は半崎輝(ひかる)さん(徳島県)の「夏の消印」が受賞した。伊佐山さんらは受賞を喜び、「今後も書き続けていきたい」と意欲を見せた。饒平名会長や作家の椎名誠選考委員長らは3人をたたえ、今後の執筆にも期待を込めた。
 授賞式には伊佐山さん、佐藤さん、半崎さんの受賞者と選考委員の椎名さん、もりおみずきさん、大城貞俊さん、同文化協会員らが参加した。
 饒平名会長は受賞した3人を祝福し、「テーマの島と登場人物の生き方を上手く交差せた作品、希望ある作品が選出されたと感じる。生と死、自分の生き方の模索や親子の情愛などを描いた作品には文学の力や内容の素晴らしさに深く感動した。今後も島を紡ぐ特徴ある文学賞が島の未来を語り、人々に愛されるよう全国に発信していきたい」とあいさつした。
 座喜味一幸市長は、来賓祝辞で「宮古島文学賞は年々知名度が上がり、作品のレベルも向上していると聞いている。本市としては今後も市民の誇りである文学事業を支援していきたい」と述べた。
 受賞者あいさつした伊佐山さんは「水平線」を書いたきっかけなどを語り、「初めての宮古島で、きょうは佐良浜に行ったが海がきれいだった。自分が想像していたより空気感を感じ、また書いてみたいと思った」と述べた。
 作品の「水平線」は、がん再発の不安を抱えた女性が新しい生き方を求めて祖母が住んでいた伊良部の佐良浜で一人暮らしを始める。DV(家庭内暴力)から逃れてきた親子や漁師の若者らとの交流を通して希望を取り戻していくという物語。
 椎名さんら選考委員は「希望を作る文学の力を示した作品で満票だった。最後に海のかなたのニライカナイに結実していくあたりが、小説としての安定感を得ている」と評価した。
 佐藤さんの「爆(は)ぜる。」は、21歳のフリーターの「俺」が夢や希望も家族も失い、末期がんの母のために医者を目指したが挫折して夜の街を奇妙な恰好(白衣)で闊歩(かっぽ)する日々の中で最終的に明るく生きるお笑い芸人を目指すという物語。
 大学生から小説を書き始めた佐藤さんは「これまでの書くという経験が文学賞につながったことはうれしい」と語った。
 半崎さんの「夏の消印」は、小学1年だった「私」が両親の離婚で母と共に島を離れる。20年後、結婚を前に父の消息を訪ねて島を訪れるが、偶然出会った男が父であった。父は「私」のことを気づかずに、私も名乗らずに別れるが、父子の深い情愛が静かに描かれている。選考委員からは「ですます調の敬体の文章で低く音楽が流れているような心地良さがあった」との評価があった。
 実験などの仕事をしながら小説を書いてきたという半崎さんは「毎日書くことが実験と似ているところがある。これからも書き続けていきたい」と語った。

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