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能楽堂でロック、伝統の殿堂が大変身 「鬼滅の刃」からキャンドルコンサートまで広がる新たな挑戦

11月7日、大阪市中央区の「大槻能楽堂」を舞台に、音楽フェス「関西音酒場」が開催される。伝統芸能の殿堂でロックライブが行われるのは、昨年に続き2回目。大槻能楽堂ではこの他にも近年、落語やクラシックコンサートなど様々なイベントを積極的に実施している。厳かな能の舞台を他ジャンルに開放するその意図はどこにあるのだろうか。

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ロックの雷、巡り巡る能舞台との縁

今回の「関西音酒場」には、前回に引き続きライブに欠かせない存在の山下久美子や原田真二に加え、新たにダイアモンド☆ユカイが登場する。出演のきっかけは、原田から話を聞いたユカイが前向きになったことだ。

実はユカイの祖父は能楽師で、その後を叔父が継いでいたという。高校生の頃に「もう後を継ぐ人がいないから」とその話がユカイの元へ回ってきた。しかし、当時のユカイはロックンロールの雷に撃たれていた状態。迷わず断り、一家の能の道はそこで終わりを迎えた。

いま思えば「一度くらいちゃんと触れてみたかった気もする」と振り返るが、不思議なことに、いまでも能の舞台を見るとどこか懐かしい気持ちになるのだという。

「そんな俺が、今度はロックンロールを引っ提げて能楽堂の舞台に立つ。なんだか巡り巡って、帰って来たような気もするね。だから能楽堂でライブが出来ることが愉しみでしょうがない。みなさん、宜しくロックンロール!!」

レジェンドから新鋭まで「1年生」として挑むステージ

大槻能楽堂がこうした試みに取り組む背景には「開かれた能楽堂」を目指す強い姿勢がある。普段から市民や子ども向けに能の初心者教室を開催したり、一見すると異質に思える他ジャンルとの融合を図り、能を身近に感じてもらう努力を重ねてきた。

同能楽堂の広報担当は「もともとは私が前回出演してくださったROLLYさんのファンだったことから始まった企画なのですが、今回も本当に楽しみにしています」と期待を寄せる。

注目の出演者は他にも、今年ソロデビュー45周年を迎えている大澤誉志幸や、現在売り出し中の眉村ちあきらが名を連ねる。名曲「そして僕は途方に暮れる」のリリースから42年が経ち、会場では青春のほろ苦さを思い出すファンも少なくないはずだ。

今回が初の能楽堂出演となる眉村も「初めての場所。こんなところでなかなかできないので、とてもワクワクしています」と声を弾ませる。そうそうたる先輩たちとの共演に、「1年生として、ボール拾いをする気持ちでなんでもやります!」とフレッシュかつ熱い闘志を燃やしている。

この「関西音酒場」を企画し、これまでも今はなき味園ユニバースやハチ北、大阪中央公会堂など、数々のユニークな場所で開催してきた宮崎将光さんも、2回目の能楽堂開催に向けて意気込む。「前回も大いに盛り上がりましたが、2回目とあって、さらに工夫して盛り上げていきたい。能楽堂は舞台を囲むように270度近く客席があり、どこからでも見やすいのがいい。音響も素晴らしく、音に包まれている感覚は音酒場の趣旨にぴったりです」と太鼓判を押す。

「鬼滅の刃」の能からキャンドルコンサート、落語まで広がる可能性

大槻能楽堂の「開かれた」取り組みは、ロックライブだけに留まらない。近年最大の挑戦として大きな話題を呼んだのが、世界的大ヒットアニメを伝統芸能へと昇華させた「能狂言『鬼滅の刃』」だ。同能楽堂の代表であり人間国宝の大槻文藏氏が監修を務め、愛弟子の能楽師・大槻裕一氏が主人公の竈門炭治郎を演じるなど、大槻能楽堂はまさにこのプロジェクトの中核を担ってきた。

2022年の初演に続き、2025年には続編「-継(つなぐ)-」の大阪公演も同館で開催。炭治郎の「ヒノカミ神楽」を能の神聖な儀礼「翁(おきな)」に見立てるなど、古典の型をそのまま生かした本格的な演出で、普段能楽堂に足を運ばない多くの若い世代や家族連れを魅了した。

さらに、近年では数千本のLEDキャンドルが舞台を埋め尽くす新感覚の「Candlelight(キャンドルライト)コンサート」や舞台と親和性の高い落語の公演も定期的に開催。また「次世代への継承」として初心者へ向け、解説やデモンストレーション付きのワークショップはもちろん、一般の人が実際に能面(おもて)をつけ、能舞台に立って所作を体験できる実践的なプログラムも用意。ただ観るだけではない能の奥深さを、五感を通じて学べる場を創出している。

2020年の大規模リニューアル、伝統を未来へ紡ぐ挑戦

大槻能楽堂は90年以上の歴史を持ち、戦時中も奇跡的に空襲を免れた貴重な建物である。昭和58年(1983年)に現在の形へ改築された後、築35年が経過したことから大規模な改修工事を実施し、2020年1月にリニューアルオープンを果たした。

このリニューアルでは客席数をあえて減らして一席あたりの幅を広げ、最新の照明や空調設備、音響システムを導入。歴史ある雰囲気を残しながらも、他ジャンルのイベントにも多目的に対応できる極上の快適空間へと生まれ変わっている。

能楽堂が目指す今後の希望は、これらのイベントをきっかけに、本業である「能・狂言」のファンを一人でも多く増やすことだ。担当者は「まずはロックライブやコンサートを目的に気軽に来場し、この歴史ある空間を楽しんでもらいたい。そしてそこから『次は能そのものにも触れてみよう』と思ってもらえれば」と、これからの活動への意気込みを語る。

伝統の灯を守りながらも、現代のカルチャーを柔軟に受け入れる大槻能楽堂。その革新的な挑戦は、これからも大阪の街に新しい刺激を与え続けてくれそうだ。

文/山本智行 内外タイムス編集部

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