高市首相の国連演説、会場はガラガラ…身振り手振りの熱弁も「空回り目立つ」との報道
先週、高市早苗首相は国連総会で初の一般討論演説を行ったが、東洋経済オンライン(東洋経済新報社)は、議場内の大半が空席で、「身振り手振りの熱弁も空回りが目立つ状況だった」と報じた。内閣広報室が配信している「首相官邸」X(旧Twitter)のライブ映像を確認しても、ガラガラの議場は明らかだ。
公平を期すために書くと、一般討論演説は各国が入れ替わり立ち替わり登壇する長丁場で、自国の演説以外で代表団が席を外すのは常態化しており、空席自体は珍しい光景ではない。高市首相だけが特別に軽視されたわけではないようだが、とはいえ、国際社会における日本の存在感の薄さは隠しようもない。
高市首相が米ニューヨークでトランプ、ゼレンスキー大統領と首脳外交 真価が問われる習近平主席との11月会談交渉
例えば、オランダのロブ・イェッテン首相は「ICC(国際刑事裁判所)にも、国際的な法秩序を守る全ての機関にも手を出すな」と訴え、議場から大きな拍手が上がった。ICC解体や弱体化へ圧力を強めるトランプ米政権を念頭に置いた発言だが、高市首相は「法の支配」の重要性と日本のこれまでの貢献を強調するだけで、ICCについては、国際司法裁判所(ICJ)や国際海洋法裁判所(ITLOS)と並べて名前を挙げるにとどめている。
オランダはICCの本部を置く当事国だが、日本もICCの赤根智子所長を輩出する当事国である。一般論を語るだけの高市演説が、イェッテン首相の演説に比べて迫力不足なのは明らかだ。アントニオ・コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)もICC高官らへの「脅迫や攻撃は容認できない」と演説している。
もっとも、今回の訪米で高市首相にとって国連演説より重要だったのは、日米首脳会談だったかもしれない。世界中が注目した米中首脳会談直前にトランプ大統領と会って、台湾問題で譲歩しないよう釘を刺す狙いがあった。大統領が以前から「台湾は交渉のカード」であると明言しているからだ。
米中の思惑に日本は…
では、その米中首脳会談でどんな発言があったのか。世界はどう見たのか。
トランプ大統領は記者の質問に「台湾について長く話し合ったわけではない」とコメントし、米デービッド・パデュー駐中国大使は「(米国の台湾政策に)変更は全くない」と語っている。発表された成果文書に台湾についての言及はなく、大統領が正確にどんな発言をしたのかはわからない。
ただ、日本政府が困惑しているのは、トランプ大統領が「米中は第2次世界大戦で同盟国として勝利するためにともに戦った」と発言したことだ。この同盟国発言について「トランプ流のリップサービス」(外務省関係者)との見方があり、米専門家も「(大統領は)同盟国という言葉にとくに重要な意味を込めてはいない」と指摘しているので、トランプ氏らしいと言えばそれまでである。
第2次大戦中、アメリカと同盟関係にあった中国政府は、現在の台湾につながる蒋介石率いる中華民国だった。中華人民共和国の成立は戦後の1949年であり、米政府がその違いを知らないはずはない。米中が同盟国だったというナラティブ(戦略的な物語・歴史観)は、習近平主席が1年以上かけてトランプ大統領に刷り込んできた認知戦である。それでもトランプ大統領は、習主席との親密さを演出するため、中国が発信するナラティブに乗った。11月の中間選挙を前にアピールできる成果が欲しかったわけだが、米中首脳会談で得たのは2頭のパンダくらいというのがもっぱらの評価だ。
時事通信によれば、日本政府関係者は「心地よい発言ではない」と認めており、日本の頭越しに米中は接近している。
文/横山渉 内外タイムス





