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本来の姿とはかけ離れた「地方創生」 地方は「原発」か「防衛関連拠点」の2択か

もうすぐシルバーウィークだ。「シルバーウィーク」の由来は諸説あるものの、代表的なものとしてシルバー世代の「高齢者」の意味のほか、同じ連休ということで5月の「ゴールデンウィーク」と対になる意味合いもあるという。

内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、令和7年10月1日現在の日本の総人口は1億2322万人で、そのうち65歳以上の人口は3622万人に上る。総人口に占める65歳以上の人は29.4パーセントで、総務省統計局によると、この数字は人口4000万人以上の世界38カ国の中で最も高い数字だという(2位はイタリアの25.1パーセント)。

この数字を見て、日本は〝超″がつく高齢社会なので「お年寄りをいたわろう」などと、お気楽な話をしたいのではない。高齢者が増えて生産世代が減れば、国の社会保障費の支出は増える。若い人の負担は増え、国内市場が縮小するのも無理はない。

若者は進学や職などを求めて都市圏に集中する。総人口が減っても東京を中心とする都市圏への人口流入の流れは止まらない。若者の都市圏流入はもちろん地方圏の高齢化率に拍車をかける。ここまでの話は誰もが予想できる話だ。

高齢化率が高く、大きな産業もない多くの地方自治体では税収が落ち込む。税収が落ちれば住民への行政サービスの質は低下する。すると住民はますます地元への愛着を失ったり、場合によってはよりサービスの高い他自治体へと転居してしまう。魅力のない自治体にわざわざ転入してくる人もいなくなる。こういう悪循環が生まれる。

福島第一原発事故から15年……廃炉費用の総額は8兆円 これまで費やしたのは2兆円

核のごみ最終処分地「文献調査」で最大20億円

8月31日以降、茨城県常陸大宮市のニュースが全国を駆け巡ったことをご存知の方は多いだろう。同市が高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地候補として、経済産業省から「文献調査」の申し入れを受けたとの報である。

「文献調査」を受け入れた地元自治体には電源立地地域対策交付金が2年間で最大20億円支給され、次の「概要調査」に進めば4年間で最大70億円の臨時収入が転がり込む。同市の鈴木定幸市長は同日行われた会見で、受け入れた場合のメリットについて、はっきり「お金」と明言した。

TBS系列のニュース番組「報道特集」によると、鈴木市長は会見の中で、こうも言ったという。

「市民の皆さま方から、『このままでは常陸大宮市は50年後はなくなってしまうんじゃないか』と。急激な人口減少、あるいは地域経済の疲弊、そんなことを考慮いたしますと、やはり、国策に貢献する意義というものは少なからずあるんだろうと、私は考えております」

同市の公式ホームページには令和5年10月1日現在の数字だが、高齢化率が40.2パーセントと表記され、「全国や茨城県を大きく上回る高齢化率で推移しています」との言葉も添えられている。

常陸大宮市のように核のごみをめぐる最終処分地候補として、第1段階の「文献調査」に応じたのは同市が全国では5例目で本州は初めてだ。他の4自治体も東京都小笠原村の南鳥島以外は調査を受け入れた背景にあるのは人口減少や財政難だ。

関西電力が示す原発建設に適した立地条件とは…

そもそも原子力発電所に目を向ければ、原発がなぜ都市部ではなく地方にしかないのか。おのずと考えれば分かることだが、これについて関西電力はホームページで主に4つの理由を示している。

1.広い敷地を確保できること

2.海岸または大規模河川沿いに位置することにより大量の冷却水を確保できること

3.事故の誘因となる可能性のある地震を考慮し、堅固な岩盤を有すること

4.地元の方々からのご理解

同社はこの条件などに基づき、原発の建設予定地を決めるとするが、この判断には疑問符がつく。特に2の根拠は2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島原発の事故ですでに破たんしているし、3も火山大国であり、どこで巨大地震が起きてもおかしくない日本ではかなり厳しい。

もっと言えば、1も都市圏は厳しくとも関東や関西ともなれば、広い敷地はいくらでもあるし、4などは原子力関連施設が地元にできるとなれば、住民がそれなりの懸念を抱くのは当たり前だ。

8月20日現在、国の原子力規制委員会によると国内には33基の原発があるが、どの立地も都市部から離れた地方にあり、原発を受け入れただけで国や電力会社からばく大な資金が流れ込む構図になっている。

東京新聞によると、国から受け取れる最も規模の大きい交付金「電源立地地域対策交付金」については5年間で約3500億円を原発立地自治体などに配分したことを明らかにしている。原発が立地しているだけで一定の収入が見込まれ、交付金は公共施設の維持・整備費から公務員の人件費にまで幅広く使われているという。

苦難の歴史を抱える沖縄の実情

原発と同じ構図で語られるのが沖縄の米軍基地だ。日本の国土面積のわずか0.6パーセントに過ぎない沖縄県に、米軍の専用施設が約7割集中している異常な状況下にあって、これまでも米兵による犯罪被害や日常的な騒音、PFASなどの水質汚染、航空機事故など県民は多大な基地負担と生活被害を強いられている。

先の大戦で悲惨な地上戦を経験し、戦後27年間にわたって米軍の統治下にあった歴史的経緯。さらには本土との収入格差や沖縄経済の自立的発展の難しさなど、沖縄の特殊性が考慮された国の独自予算に「沖縄振興予算」がある。県は毎年国に3000億円台の額を求めているが、2022年度からはそれを下回っている。

この振興予算については、県も「沖縄だけが優遇されているわけではない」と言うように、国が他県などに支出しているものと内容は変わらない。ただ、以前から政府が沖縄県政の状況に合わせて額を操作しているのではないかという疑念は尽きない。

沖縄を含む南西地域では近年、中国の動きも活発だ。ロシアによるウクライナ侵攻も相まって、安全保障環境が一段と厳しさを増している。防衛省は2027年度予算に過去最高の約8兆9000億円を概算要求したことは大きく報道されているとおりだ。

「厳しい安全保障環境」を根拠に全国で進む防衛拠点の整備

防衛費増額の背景には、米国から防衛費を国内総生産(GDP)比で3パーセント以上と求められているとの報道もあり、国は全国の防衛拠点の整備を着々と進めている。

なかでも有事の際の防衛拠点の整備は喫緊の課題で、政府は全国の民間空港や港湾などを「特定利用空港・港湾」に指定し、戦闘機や輸送機の離発着を可能にしたり、輸送艦や護衛艦が港湾に接岸できるように整備し、関係自治体には多額の整備費が投入されることになる。

さらに有事に必要な弾薬の製造や保管についても、政府は検討を推し進めている。弾薬の確保についてはウクライナとロシアの戦闘でも大きな課題となっており、国はいわゆる戦闘を継続できる能力「継戦能力」を確保するため、防衛関連工場などの設備を国有化し、民間委託する形で弾薬生産することが検討中であることを朝日新聞が報じた。

弾薬を保管する「弾薬庫」についても、政府はおおむね2032年度までに全国で130棟整備する方針で、受け入れる自治体側は国からの補助金や自衛隊員が地域に移住することに伴う人口増を期待する一方で、住民からの反対運動が起きている地域もある。

また8月28日、防衛省は広島県呉市にある日本製鉄の製鉄所跡地を取得したことを発表した。小泉進次郎防衛相は9月7日、現地視察後の会見で、跡地の活用について「防衛装備品の維持整備・製造、訓練、補給等を一体的に機能させた多機能な複合防衛拠点を整備する」と語った。

合わせて1日から跡地内に民間企業の誘致エリアを設け、参入企業の募集も開始したことも紹介した上で、「地元経済への貢献なども加味しながら評価を行い、企業を選定していく考えだ」と強調した。この構想実現に向け、呉市側は2025年5月以降、これまで3回にわたって防衛省に要望を重ねてきたという。

「地方創生」とは「地域が自立的で持続可能な発展を目指す取り組み」であると政府は音頭を取る。ただ、地方側に新たな事業構想を立ち上げたり、民間企業と協力して何かを生み出すといった余力はあるのか。むしろ国の公共事業案件に名乗りを上げる方が一番の得策であると内心分かっている。

ここにきて盛り上がりを見せる「原子力」「防衛」分野ではあるものの、両分野は依然として受け入れる住民側から見ればアレルギーは根強い。それらを自治体が受け入れるかどうかは財政状況と住民感情に左右される。名ばかりの「地方創生」が一人歩きしている。

文/寉見陽平 内外タイムス

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