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統合失調症の42歳被告人が「QSGK」と落書き 老いた母親「孤独というのは辛いもの」【裁判傍聴記】

令和8年9月15日、徳島地方裁判所201号法廷には、季節にそぐわない赤いダウンジャケットを着て、紫のパンツをはいた男が刑務官に連れられ入廷してきた。

頭ははげ散らかしており、パッと見たところ年齢は50代後半だろうか。

人定質問が行われ、男の年齢が42歳であると知り、驚く。

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男の罪状は徳島市内のパチンコ店に設置された消火設備、看板に「QSGK」と落書きし、所有者に13万6000円の損害を与えた器物損壊罪であった。

検察官が起訴状を朗読し終え、裁判官が黙秘権の説明をし、罪状認否を問うと、男は答える。

「聞いてなかったんでもう一度お願いします」

少しムッとした表情を見せた裁判官は「もう一度、検察官に読んでもらいますから今度はしっかり聞いていて下さいね」と男に伝え、検察官が再び朗読を始める。

改めて「起訴状に間違いはあるか?」と裁判官に問われると男はふてくされたように「ないです」とあっさり答えた。

男は刑務官に囲まれ、弁護人の前に用意されている長椅子に漫画「DEATH NOTE」に登場する探偵Lのように座り、自身の右手の親指をかんでいる。そして、その状態のまま冒頭陳述が始まる。

男は前科5犯を有しており、直近では令和5年6月、高松地裁にて常習累犯窃盗罪で懲役2年6月の実刑判決を言い渡され服役している。

出所後、男は「落書きも芸術」、「街を芸術であふれさせる」と建物への落書き行為を繰り返していた。事件当日も自身のインスタグラムに投稿するために落書きをしたという。

男が落書きした「QSGK」とはネットスラングで「クソガキ」を意味する。

問題行動によって強制退院後、窃盗事件を起こして服役

証拠調べが終わり、男にはまだ5件の追起訴が予定されている旨、検察官から伝えられ、この日の公判は早々に終わろうとしていた。

すると弁護人が「本日、被告人のお母さんがせっかく来ているので証人尋問を出来ませんか?」と言い出した。

母親は現在、闘病しており、次回公判に来られるかわからないため、可能なら本公判で実施したいという趣旨であった。

裁判官は請求を認め急きょ、母親の証人尋問が実施された。70代と思われる母親は現在、抗がん剤治療中であるという。

弁護人「息子さんには病歴がありますね?病名は?」

証人「病名とかは聞いたことないです」

弁護人「統合失調症では?」

証人「ああ、はい。そうそう」

弁護人「診断されてどのくらい経ってます?」

証人「えーっと…」

被告人「緊張せんでええから」

目の前の証言台に座る母親に被告人が横から言う。

証人「20年くらいでしょうか」

男は何度も入退院を繰り返し、前刑で服役する前は1年ほど、3つの病院に入院していた。

そのうち、1つの病院では薬漬けにされ、かわいそうで見ていられなかったと母親は証言する。

そして、最後に居た病院では暴れるなどの問題行動が多く、これ以上は対処できないため「出ていって下さい」と病院から言われ、退院せざるを得なかったという。

そして強制退院後、窃盗を起こし、常習累犯窃盗罪で刑務所に服役した。

弁護人「今回、窃盗、落書きの事件を起こしているけど、家族で気をつけていたことは?」

証人「特にはありません」

弁護人「なぜ息子さんは今回、このような事件を起こしたと考えていますか?」

証人「私たち家族はみんな働いていて、いつも息子は家で一人なんです。一人の時間が長引いて自分の世界に入り込んで、わけのわからない行動をするんです」

弁護人「これからも息子さんのお世話を続けていくつもりですか?」

証人「はい。今回は頑張ってきたつもりなんですけど…」

弁護人「今回、刑務所に入る可能性が高いですけど?」

証人「逮捕されて三か月も拘束されているので、もういいんではないかと私としては思っているんですけど…」

裁判官「お母さんが把握している被告人の病状はどんなものですか?」

証人「20年近く前に病院で言われたのは、このままいくと認知症みたいになると。『わぁー』って興奮すると手がつけられなくなるんです。状態が良い時は問題ないんですけど」

裁判官「事件当時は悪い状況ではなかった?」

証人「はい」

弁護人「最後に裁判官に向けて何か言っておきたいことはありますか?」

証人「孤独というのは本当に辛いものなので…みなさん想像できないと思うのですが、そこを考慮して頂けましたら…」

最後にそう述べた母親の証人尋問が終わり、裁判官から「お疲れさまでした」と言われ、証言台を立った母親は傍聴席には座らず、そのまま法廷のドアを開け、帰っていった。

母親不在の法廷で、法曹三者は次回期日を決め、閉廷した。

「孤独というのは本当に辛いもの」

一人ぼっちの男の次回公判は令和8年11月19日、徳島地方裁判所205号法廷で開かれる。

文/田辺朋之 内外タイムス

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