ゼロゼロ融資で苦しむ2つの業界 鳥貴族と串カツ田中が見せた「正反対の戦略」
レストランや結婚式場を運営していたGlanzが、8月に名古屋地裁一宮支部から破産手続きの開始決定を受けた。同社は、コロナ禍を乗り切るために「ゼロゼロ融資」を活用して資金繰りを維持したが、返済負担の重さが倒産の要因の一つになったようだ。
ゼロゼロ融資とは、政府が実質無利子、無担保で融資を行うという制度。利息のみを支払う「据置期間」を導入するなど、借りる側に有利な制度だった。2022年9月末で融資の新規受付を締め切っているが、返済期限は最長20年に設定されており、融資を受けた企業には現在も返済義務が残っている。
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多くの飲食店はゼロゼロ融資を活用してコロナ禍の資金難を乗り切ったが、5~6年たっても集客力・収益力が回復しない会社は、その借金が重荷になっている。近年は、Glanzと似た事例が相次いでいるようだ。
2026年2月、高級料理店の「十番右京」などを都内で運営していたビクトリックスが事業を停止。同月には、新潟県三条市で割烹「餞心亭(せんしんてい)おゝ乃」を運営していた角屋が、破産手続きを開始した。5月には、同上越市で居酒屋「越後炭火焼大統領」を運営していた森本商事も破産手続きを開始した。
2024年12月には、金沢に地盤がある結婚式場運営会社「かづ美」が民事再生法の適用を申請。スポンサーによる再建を模索したが支援先が見つからず、2025年3月に破産手続きの開始決定を受けた。
いずれもコロナ禍で融資などを活用して資金繰りを維持してきた企業だ。業績が十分に回復しない中で借入金の返済を迎え、資金繰りの厳しさが増していたケースもある。
東京商工リサーチによると、2025年度の「ゼロゼロ融資利用後倒産」は410件。業種別では飲食店が60件で最多だった。中でも居酒屋が多い。
コロナ禍では企業の宴会や大人数の飲み会が大幅に減少し、その後も完全には元に戻っていない。宴会離れの傾向はコロナ前からあったが、コロナ禍が企業や消費者に飲み会のあり方を見直すきっかけとなった側面もあるだろう。
鳥貴族と串カツ田中「正反対」の戦略
婚礼業界も厳しさを増している。「ベストブライダル」などを傘下に持つツカダ・グローバルホールディングは、2026年12月期上半期の施行件数が、前年同期比で10%下回った。
割安な結婚式を提供する「スマ婚」は2026年4月~6月の施行件数が前年同期比で5%減少。成約件数も27%減少した。
矢野経済研究所による調査では、挙式披露宴・披露パーティ市場規模は2025年が1兆1256億円となる見込み。2019年と比べて20%縮小している。
挙式・披露宴は300万円を超える費用を要するケースが目立つ。新型コロナが猛威を振るう前から、当初の見積もりを上回る金額が提示されるなど、サービス面の問題を指摘されてきた業界だが、コロナ禍をきっかけに、さらに根本的な意義が問われるようになった。
業界に逆風が吹く中、物価高による節約志向の高まりが加わった。住宅購入や子育てなど、その後のライフイベントに必要な資金を考えれば、結婚式で数百万円の支出を行いたいというカップルが減っても不思議ではない。
こうした背景もあって、飲食店や結婚式場では価格戦略の二極化が鮮明になった。付加価値を高めて単価を引き上げるか、それとも価格を下げて客数を取りにいくかだ。
鳥貴族は今年10月1日から均一価格を税込390円から410円に引き上げている。一方、串カツ田中は9月に税込110円のハイボールの提供を始めた。酎ハイも495円から319円に引き下げた。同じ居酒屋チェーンでも、価格戦略は正反対だ。
結婚式場も大手運営会社が婚礼単価の引き上げに力を入れる一方、レストランウエディングや小規模の式場運営会社は手頃な価格を打ち出しているケースが目立つ。中堅運営会社のエスクリは「スマ婚」と提携し、会場を提供している。
ただ、大事なのは「会社が明確な生き残り策を打ち出せるか」という点だ。客数が回復せず、客単価も上げられなければ、Glanzなどと同じく、コロナ禍で積み上がった借金を返済する余力も生まれない。
ゼロゼロ融資に助けられ、猶予を与えられた企業も多いだろう。しかし、その間に収益構造を変えられなかった企業にとって、今度は融資そのものが重荷になっている。コロナ禍から5年以上が経過した今、先送りされていた経営判断を下す時期が来ている。
文/不破聡 内外タイムス






