日米共同統合演習が示す「侵略を防ぐ力」 ―中国を念頭にした抑止と、島民との信頼をどう両立するか― 下地在住 浅野潔
日米共同統合演習が示す「侵略を防ぐ力」
―中国を念頭にした抑止と、島民との信頼をどう両立するか―
10月19日から29日まで、日米共同統合演習「キーン・ソード27」が行われます。宮古島でも各種訓練が予定されています。南西諸島の厳しい安全保障環境の下、私は演習の成果に大いに期待します。日米安保体制の実効性を高め、侵略を未然に防ぐための重要な取り組みだからです。
特に、中国の軍事活動を直視すべきです。中国海警船は尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、中国軍の空母や艦艇は沖縄本島と宮古島の間を通り、太平洋で活動しています。台湾周辺でも軍事演習を重ねています。公海での艦艇の航行や、その上空での軍用機の飛行自体が、直ちに違法となるわけではありません。しかし、力や威圧による一方的な現状変更の試みには、強い警戒が必要です。宮古島では遠い国際情勢として片付けられません。
今回の演習は、公式には特定国を対象としていません。しかし、中国の活発な軍事活動を踏まえれば、日米が領土と国民を守る意思と能力を示すことには、大きな戦略的意義があります。侵略を企てても目的を達成できないと相手に認識させ、思いとどまらせる。これが「拒否的抑止」です。日米の強固な連携を実際の演習で示すことは、戦争を未然に防ぐための重要な戦略的メッセージとなります。
自衛隊と米軍は、それぞれ異なる指揮系統を持っています。このため、平時から情報を共有し、行動手順をすり合わせ、実際に部隊を動かして課題を見つける必要があります。共同対処の手順を繰り返し演練することが、日米同盟の実効性と信頼性を高めることにつながります。
宮古島では共同調整所の運営、通信、平良港などを使った輸送が計画されています。「島の護り」は部隊の駐留だけでは成り立ちません。情報が届くか、物資が運べるか、離れた部隊と連携できるか。地味に見える訓練こそ、共同対処を支える大切な基礎です。確実に連携できる態勢を築いてほしいと思います。
抑止効果は相手の認識にも左右され、演習だけで完成するものではありません。それでも、力による一方的な現状変更を許さないという確固たる意思を共同訓練で示す価値は大きいはずです。中国には軍事的威圧の停止と国際法の尊重を求める一方、偶発的な衝突を防ぐための対話も必要です。軍事的な備えと外交は二者択一ではありません。
一方、市民への説明には課題が残ります。6月には「レゾリュート・ドラゴン26」をめぐり、宮古島市が5地区で意見交換会を開きました。その場では、訓練の安全性や住民避難などについて、市民から疑問や不安が寄せられました。その後、7月19日には沖縄防衛局も防衛セミナーを開催しました。こうした努力は評価しますが、市民の疑問や不安がどこまで解消されたのか、確認する必要があります。
今回の演習について、沖縄防衛局から宮古島市に具体的な計画が通知されたのは10月2日、開始の17日前でした。私にも唐突な印象が残ります。宮古空港や平良港を使うと聞けば、島外への通院に使う航空便や、生活物資を運ぶ船便への影響が気になります。国には沖縄の歴史や基地負担を踏まえ、もっと早い段階から丁寧に説明し、市民の疑問に具体的に答えてほしいのです。
在沖米海兵隊員が強盗殺人容疑で逮捕された事件も看過できません。刑事責任は司法の判断を待ちますが、失われた命の重さを真摯に受け止める必要があります。
米軍には捜査への全面的な協力と、指揮官の責任による規律の徹底、再発防止策の確実な実施と検証を求めます。地域社会の信頼は、言葉だけではなく、継続的な行動によって築かれるものです。
ここで問われるのは、日米共同対処・抑止能力の強化と、それを支える地域社会の信頼をどう両立させるかです。強固な共同対処能力は侵略を思いとどまらせる力であり、地域社会との信頼関係は、その能力を安定して発揮するための重要な基盤です。日米が共同対処能力を高めても、その活動を支える地域社会の理解と信頼が損なわれれば、基地の安定的な運用や同盟の持続性に支障が生じかねません。米軍には厳正な規律と再発防止を、国には早い段階からの説明と対話を求めます。日米の結束を周辺諸国に示すと同時に、その足元に暮らす人々の信頼を築くことー両方を果たしてこそ、共同演習の戦略的意義は一層確かなものになると考えます。
下地在住 浅野潔



