アルコール依存症の女性被告、生活費をお酒に費やし金欠で万引き…前回判決から1カ月後の犯行【裁判傍聴記】
横浜地裁で窃盗罪により執行猶予付きの有罪判決を受けてから約4カ月半。59歳の女性被告は再び法廷に戻ってきてしまった。前回の裁判で「アルコール依存症で、万引きをしてしまいます」と力なく語っていた女性だった。
神奈川県内のスーパーマーケットでハンバーガーなど6点(約1400円相当)を万引きしたとして、今年4月に拘禁刑1年、執行猶予3年の判決を受けた。そのちょうど1カ月後、今度はコンビニでレトルト食品など2点(約550円相当)を盗んだ。
情状証人として、同居している交際相手の男性が出廷。前回4月の裁判でも同じく証人として法廷に立った人物だ。実際には、被告は昨年9月にも同様に万引きの窃盗罪で罰金30万円の略式命令を受けており、その金額を賄ったのも同じ男性だった。男性が被告の窃盗裁判手続きに関わるのは、約1年で3度目となる。
前回、男性は「大切な人であるということも踏まえて、やはりここで突き放すわけにはいかないな、と。今後より厳しく自分が指導管理していこうと決めました。これから本人がしっかり変わってくれると信用した上で…」と語っていた。そして「アルコール依存を根本的に改善しないといけない。とりあえず、病院に行こうという話をしています」と明かしていた。
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同居男性も「もう手に負えない」
2人は約2年前に知り合った。場所は、各種依存症治療で定評のある専門病院。結婚を前提に同居しているといい、男性は「家事全般をやってくれる。(その面では)とてもしっかりしている」と話す。
ただ、男性から生活費をもらっても、お酒に費やしてしまい、手持ちの現金がなくなって万引きをすることの繰り返しだった。男性によると、直近約1年半の間に少なくとも30回は万引きしている。それも店舗から呼び出されて注意を受けたり、警察の取り扱いを受けたりしたことで把握できた回数に過ぎず、実際にはもっと多い可能性が高い。
弁護人「どうしてもお酒の誘惑に負けてしまう?」
被告「そうですね…」
50歳の頃からアルコール依存症の治療で通院し、入院していたこともあるようだ。近年は「お金がなくなり、通院できていない」と、生気のない声で言う。2年ほど前にはスーパーでパート勤務していたが、そのスーパーでも万引きをしてしまい、以降は仕事に就けずに生活保護を受給している。
やせ型で、やつれすぎているようにも映る被告。弁護人らの質問に対し、回答のテンポがやや遅れたり、少しずれた回答をしたりすることも散見された。
捜査当局の聴取に、「もう手に負えない」と漏らしていたという男性。アルコール依存症に加えて、クレプトマニア(窃盗症=窃盗行為の衝動を抑えられなくなる精神疾患の一種)の治療のため入院することを「強めにたびたび言ってきた」ものの、「本人がどうしても『行きたくない』としか言わない状況だった」と法廷で嘆いた。
「本人が『行かない』となると、他に手段がない。自分の方も、限界を迎えているというのはあるので…」
「弁護人ですけど…お考え甘くないですかね」
被告は断酒会に参加していることは明かしたものの、入院の必要性については法廷の場でも「入院するか通院するか、まだ考えられていない」と、やはり消極的だった。
弁護人「証人(男性)も、ずっとあなたを監視できるわけではない。一人の時間ができても大丈夫ですか」
被告「一切お金をもっていないので、それは大丈夫です」
弁護人「お金をもっていないから、万引きしてしまうのではないの?」
被告「お金もっていても、いなくても、しないです」
弁護人「でも、今までは繰り返してきていましたよね」
被告「…窃盗はもう絶対しないと言うしかないんで」
この答えに、弁護人は「私、あなたの弁護人ですけど…お考え甘くないですかね」と厳しい表情になった。
弁護人「今まで通院でどうにか(解決に)なっていないですよね」
被告「ないですね」
弁護人「通院と入院、どちらがいいと思いますか」
被告「入院の方がいいと思います」
弁護人「自分一人で解決しようとしても、恐らく今後も繰り返す。それは分かりますか」
被告「はい」
被告人質問というより被告人“説得”というような問答で、「今後は入院する」との言質を何とか引き出した。だが検察官による質問に移ると、被告は次のように言って入院をめぐるやり取りは振り出しに戻ってしまう。
「自分は、そういうこと(万引き)はしないという自信があったんで」
検察官「今後、入院するということでいいですか」
被告「まだ分かんないです」
クレプトマニアにも様々なタイプがあり、万引き行為自体の記憶がないケースもある。本人は万引きをしないと本気で自信をもっていても、意識せず万引きしてしまうこともあり得る。より詳細な診察が必要だろう。
横浜地裁は被告に拘禁刑10月(求刑・同1年2月)の実刑判決を言い渡した。前回の執行猶予も取り消され、長い服役となる。
文/篠田哉 内外タイムス






