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書評「宮古島市史第2巻祭祀篇(上)」

 






2018/05/17 09時04分配信 - 文化・芸能 -

 大香炉で焚かれる平香の束、 それを写したモノクロ写真の上に火の色で記された 「みやこの祭祀」 の文字。 インパクトのあるその装丁は、 祈りが暮らしの中に根を張っていた過去から、 現在、 そして祈りの先の未来までも包含する静かで力強いエネルギーに満ちている。 香煙の行き先に思いを馳せながら、 祖先が繋いできた祭祀の持つ意味を改めて考えさせられる一巻である。
続き
 このほど、 『宮古島市史第二巻祭祀篇 (上) /重点地域調査・みやこの祭祀』 が宮古島市教育委員会から発刊された。 宮古島市史編さん委員会の編集によるもので、 2012年に刊行された 『宮古島市史第一巻通史篇・みやこの歴史』 に継ぐ第2弾となる。
 本書には上野地区の宮国集落、 城辺地区の字福里、 平良地区の宮原を形成する9つの小集落について、 年間祭祀の調査結果が収録されているほか、 個別祭祀の調査報告として 「宮古島の結婚と祭礼」 ニコライ・A・ネフスキー (小川琢治抄録)、 「漲水御嶽のユークイ祭祀と儀礼歌」 (本永清)も収められている。 文中には地図や図表、 写真等が多く取り入れられ、 本文がより理解できるよう工夫されている。
 編集にあたった市史編さん委員会の下地和宏委員長は、 発刊に寄せて 「祭祀には宮古の人たちの伝統的なものの見方、 考え方が反映されているように見受けられ、 祭祀を記録しておくことは、 宮古の人たちが現実とどう向き合ってきたのかを理解する上でも重要なこと」 と述べている。
 宮古の祭祀はシマの人たちの信仰世界の基層であり、 シマの精神文化の原点でもある。 祭りを支えてきた農耕や社会構造が変容し、 祭祀の継承が難しい現況において、 このタイミングで集落ごとの祭祀を改めて調査し、 詳細に記せた意義は大きい。
 当初、 一巻に纏められる予定だった 「宮古島市史第二巻祭祀篇」 は、 調査を進める中、 一巻構成では収めきれない状況となり、 (上) 重点地域調査、 (下) 悉皆調査地域の二巻構成になったという。 (下巻は平成31年度発刊予定) 集落によっては年間50件をこえる祭祀が行われているとのこと。 祭祀を司る神役の方たちはもとより、 今回多くの祭祀調査に携わった編さん委員の皆さんに心から敬意を表したい。
 人々の平安と安寧、 五穀豊穣、 豊漁等を祈りながら、 暮らしの延長線上で営まれてきた祭祀は、 過去を集積した現在から、 未来を志向するポジティブな営みともいえる。 また、 宮古の人たちが暮らしと共に祖先から受け継いできた美しい特質でもある。
 私たちは自然と文化に育まれて今を生きている。 生かされていることに感謝し、 見えない世界と共に生きるシマの暮らしを改めて見つめ直す貴重な一冊となるであろう。 宮古をより深く理解するためにも 「みやこの祭祀」 を是非手に取っていただきたい。

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宮古島市史第二巻祭祀篇 (上) /重点地域調査・みやこの祭祀

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